シナリオ【遥か彼方へ】 9 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●テイルの実家・表

 

雪がまだ降っている。テイルが道に来てとまり、実家を振り向く。

 

それから一方に気づいて見る。道の先、雪のなかで誰かが物陰に隠れた気配。

 

テイル、実家をもう一度見て歩きだす。

 

 

 

 

●駅

 

汽車が来て停まる。ホームには駅員が数名いて、車輌のドアをあける。乗り降りする乗客たち。

 

車輌のあるボックス席にテイルが座っている。一方を見る。

 

少し離れたドアのそばに立っていた男H。テイルと目が合ってそらす。

 

目をそらさず見ているテイル。

 

男Hは視線を遮ろうと持っていた新聞紙を広げ、顔を隠す。

 

ホームで駅員が出発の合図の笛を吹く。ほかの駅員と共に人力でドアを閉めだす。

 

男Hが新聞をめくる動作の中で気づく。テイルがいた席に誰もいない。

 

男H、慌てて乗客をかき分けホームに出る。探すが降車した人々の中にテイルはいない。駅員が閉めかけたドアに割り込むように男Hは再乗車。ドアが閉まる。

 

動き出す汽車の車輪。

 

車内でテイルを探す男H。席の方に行きかけてホームに気づく。テイルがホームを歩いている。

 

なす術なく見送る男H。周囲の乗客が不審がる。

 

 

 

 

●あるバーの看板(夜)

 

 

 

 

●バー・店内

 

客はまばら。テイルがカウンター席に座る。

 

バーテン(51)「(近づいて)いらっしゃい。しばらくですね。ご注文は?」

 

テイル「頼みたいことがあるんだ」

 

バーテン「ええ、なんなりと」

 

テイル「反政府の組織を、紹介してほしい。繋がってると聞いた」

 

バーテン「――なんの話です」

 

テイル「迷惑はかけない。力を貸してほしい。取材じゃない」

 

バーテン「なんのことかわかりませんね。誰に聞いたんですそんな話」

 

テイル「――」

 

バーテン「あの彼ですか、いつも一緒の、先輩記者の。今日は?」

 

テイル「死んだ」

 

バーテン「――死んだ?」

 

テイル「殺された。仇を討ちたい」

 

 

 

 

●テイルのアパート・表(後日・昼)

 

雨が降っている。

 

 

 

 

●テイルの自宅・ベッドルーム

 

テイルが横になっている。時計の秒針音が続き、低くなって、

 

バーテンの声「あさっての午後3時、この店をあけときます」

 

時間経過し、テイルが上着を着ている。赤茶の少し目立つコート。

 

バーテンの声「30分待って誰も来なければ、諦めるんですね」

 

 

 

 

●テイルのアパート・表

 

テイルが出てくる。傘をさして道へ。

 

 

 

 

●ある駅

 

テイルが汽車に乗る。乗降する人が多い。

 

 

 

 

●走る汽車内

 

ある席にテイル。

 

 

 

 

●別の駅

 

停車した汽車からテイルが降りる。ほかにも降車する人々。

 

テイルが人々に紛れて改札口を抜ける。素早く一方へ。それを追って人々をかき分ける男I。駅前で見渡すがテイルの姿はない。傘をさして歩く男たちはみな目立たない色のコートを着ている。

 

男Iが遠くに見える場所を歩くテイル。さした傘の中でコートの襟を整える。裏地は目立つ赤茶。別の改札口から再び入る。

 

 

 

 

●前出のバー

 

テーブル席の椅子にコートがかけられている。リバーシブルのコート。

 

隣りの椅子にテイルが座っている。店内には他に誰もいない。テイルが店の時計を見る。諦めかけて席を立つと、

 

男の声「尾行はないようだ」

 

テイル「(声の方を見る)」

 

店の出入口でなく裏口の方に男、イルグがいる。テイルの席に近づき、

 

イルグ「詳しく聞こう(椅子を引いて座る)」

 

テイル「――(座り直す)」

 

 

 

 

●バーの看板

 

雨がまだ降っている。

 

 

 

 

●バー・店内

 

イルグ「決めつけない方がいい。火事も轢き逃げもたまたまかもしれない。同じ夜に起きた偶然」

 

テイル「――(イルグを凝視)」

 

イルグ「違うとして、言う通り口封じだとして、どうする。どうしたい。証言も証拠もなきゃ、野党に流しても動かない」

 

テイル「野党は当てにしてない」

 

イルグ「なぜ」

 

テイル「主義が違えば排除するだろ」

 

イルグ「――利権だけで繋がってる与党よりマシだ」

 

テイル「本気でこの国を治める気あるかな」

 

イルグ「――ご挨拶だね。じゃあなんの協力だ。何を頼んでる」

 

テイル「武器と情報」

 

イルグ「――」

 

テイル「軍内部にもシンパはいるはず」

 

イルグ「狙いは誰」

 

テイル「ドロス・アロガン」

 

イルグ「彼が命じたと? そんな証拠あるの?」

 

テイル「――」

 

イルグ「親父に泣きついたかもしれんが、それも憶測だ。だいたいクズひとり消してなんになる。世の中変わらんよ。首相の息子なら多少影響あっても――独裁がますます進むかもしれない、悪くすると」

 

テイル「――」

 

イルグ「君の人生かけるほどのことか? 忘れるのは難しくても、もっと楽しんだら」

 

テイル「――」

 

イルグ「暴力じゃ何も、解決しない。俺らは反政府と言っても、そんな活動はしない。そう思ってるなら心外だ」

 

テイル「迷惑はかけません。警戒しなくていい」

 

イルグ「迷惑も何も、協力のしようがない」

 

テイル「罪も罰も、俺ひとりで受ける、被る」

 

イルグ「――」

 

テイル「意味があろうとなかろうと、俺の気が――こんな世の中にはもう未練ない」

 

イルグ「――3日後の夜、この店に来てくれ(席を立って裏口の方へ)」

 

 

 

 

●墓地(後日)

 

テイルがクエント家の墓参りに来ている。

 

 

 

 

●バーの看板(夜)

 

 

 

 

●バー・店内

 

カウンター席にテイルがいる。

 

バーテン「(2杯目の酒を持ってきて)どうぞ」

 

テイル「ありがとう」

 

バーテン「その棚にある袋(と一方を見る)」

 

テイル「ん?(その方向を見る)」

 

バーテン「忘れ物です。誰が忘れてったかはわからない(カウンターの別の客の方へ)」

 

テイル「(バーテンを見送り、袋の方をまた見る)」

 

 

 

 

●テイルのアパート

 

帰宅したテイルがコートの中から紙袋を出す。あけると中身は油紙で巻かれた拳銃。銃弾の箱。そして1枚のメモ。テイルが手に取って読む。

 

 

 

 

●飛行場(後日・午後)

 

大型の飛行船が係留されている。乗客の乗船が始まっている。

 

 

 

 

●待合所

 

ドロスが2人の部下といる。ドロスは時計を気にする。部下にうながされ飛行船の方へ。

 

それを離れて見ているテイル。続く。

 

 

 

 

●飛行場

 

飛行船が離陸する。プロペラを回して上昇。

 

 

 

 

●山々(夕方)

 

雪に覆われている。その上を飛行船が進む。

 

 

 

 

●飛行船・客室

 

狭い個室にテイルがいる。拳銃に弾を込める。

 

 

 

 

●飛行船・食堂エリア

 

ドロスが食事しながら談笑。

 

 

 

 

●飛行船・廊下

 

テイルが窓の外を見ている。夜の闇で何も見えない。

 

気配に振り向く。その視線の先のドアがあいて、食堂からドロスが出てくる。

 

テイル「(ドロスに向かって歩きだす)」

 

ドロス「(食堂の方を振り向き背を向ける)」

 

テイル「(上着の内側に手を入れ拳銃を出す)」

 

ドロス「(かがんで伸ばした手をすり抜け、彼の息子(3)が廊下に出てくる)」

 

テイル「(足をとめる)」

 

ドロス「(息子を捕まえようとして銃を持つ男に気づく)」

 

テイル「(銃を構えて狙う)」

 

ドロス「危ない(息子を捕まえ覆いかぶさる)」

 

ドロスの妻「(まだ食堂にいて気づき)いやー!(と悲鳴)」

 

テイル「(ドロスに狙いを定めるが撃てない)」

 

部下A「(ドロスの後ろから気づいて飛び出し、ドロスに覆いかぶさる)」

 

部下B「(その後ろで銃を抜きテイルに発砲)」

 

壁に着弾。テイルは一瞬ひるむがまた銃を向けて進む。しかし左肩を撃たれる。痛みに顔を歪め膝をつき、廊下を逆側へ。

 

部下B「(追い)待て!」

 

テイルの進む先に閉じたドア。

 

 

 

 

●機関室

 

テイルがドアをあけて入る。ドアを閉めて鍵をかける。蒸気機関の轟音の中で振り返る機関士2人に銃を向ける。

 

その後ろで激しく叩かれるドア。

 

テイル「(ドアを振り向いたあと機関士たちに)パラシュートは」

 

機関士のひとりが指さすと壁にいくつかのパラシュートがかかっている。

 

 

 

 

●廊下

 

部下Bがドアの鍵部分に銃を向ける。

 

 

 

 

●機関室

 

発砲音に振り向くテイル。パラシュートを胸に抱え、外部への扉をあける。飛行中の強風に煽られ、部下Bがドアを蹴破り、テイルは銃を向けて発砲。しかし当たらず部下Bがすかさず撃ち返し、テイルは扉の外へ。落とした銃も闇に消える。

 

ドアに駆け寄る部下B。落ちないようにつかまって外を見下ろすが何も見えない。

 

 

 

 

●空中

 

落ちるテイル。かろうじて胸に抱えているパラシュート。弾痕がある。テイルは左肩の痛みでパラシュートを離しかけ、しかし諦めずしょい込みベルトを締めて紐を引く。

 

パラシュートが開きその衝撃で銃傷に激痛。テイルは叫んだあと気絶する。

 

そのまま流されるパラシュート。弾痕がいくつか空いていて、そこから裂けだす。テイルは気を失っていて気づかない。落下スピードは緩まず山中の森に突っ込む。暗転。

 

 

 

 

●森

 

F.I.樹上からの俯瞰。テイルの視点。撃たれた左肩から血が落ちる。

 

高い樹の途中にパラシュートが引っかかり、吊られた状態のテイル。意識を取り戻し、傷の痛みにうめき、パラシュートのベルトを外す。雪の上に落ち「ああ!」とまた激痛の声。

 

 

 

 

●雪山

 

月明かりを頼りにテイルが歩いている。雪に足を取られふらつき坂を転げ落ちる。雪に埋もれ寒さに凍え、目をつぶり諦める。

 

 

 

 

●フラッシュインサート・クエント家を包む炎

 

 

 

 

●雪山

 

テイルが目をあける。再び立って進む。

 

雪上に残る足跡。血痕。

 

カメラが上昇すると、冒頭の雪山と月の遠景になる。ここでテイルの記憶が終わり、

 

ルージの声「よく助かったね」

 

 

 

 

●ベースキャンプ・内(深夜)

 

テイル「助けられた」

 

ルージ「誰に」

 

テイル「――無関係な人たちに」

 

ルージ「俺ならくじけるな、一度失敗したら。よく戻ってきたよ」

 

テイル「まだ終わってない」

 

ルージ「怖くないの」

 

テイル「――」

 

ルージ「大事な人だっているだろ」

 

テイル「いない」

 

ルージ「家族は? 友だちは?」

 

テイル「それより大きなことがある」

 

ルージ「昨日の手紙の相手は、大事な人じゃないの」

 

テイル「(ルージを見て)見たのか?」

 

ルージ「まさか。違うよ。誤解しないでくれ。そんな趣味はない。そのまま出した」

 

テイル「――」

 

ルージ「でも誰か、手紙を出す相手はいるのに、怖くないのかって。下手したらあんた死ぬよ」

 

テイル「君もな」

 

ルージ「――そう。いや、俺は死なない。死なせない。そのための指示役だし、チームだけど、今度は殺れる?」

 

テイル「覚悟の確認?」

 

ルージ「不思議なだけさ。こんなデカいこと自分から手をあげて――俺にはできない。恨みはわかるけど」

 

テイル「――」

 

ルージ「いいんだ。つまんないこと言った」

 

テイル「殺されたのは俺かもしれない」

 

ルージ「え?」

 

テイル「もしもあの日、名刺を忘れなかったら」

 

 

 

 

●回想・海軍施設の窓口

 

テイルが名刺を忘れ、クエントが代わりに出す。

 

テイルの声「もっとしつこく取材を続けると言ってれば」

 

 

 

 

●回想・クエント家の書斎

 

事件から離れるようクエントに説得されたテイル。

 

テイルの声「俺はどっかで逃げたのかもしれない」

 

 

 

 

●現実・ベースキャンプ・内

 

ルージ「そうかな」

 

テイル「彼は身代わりで、妻子は巻き添えで――それを忘れて生きてくなんて、できないじゃないか」

 

ルージ「うん――」

 

テイル「なのに俺は、何度も忘れそうになった」

 

 

 

 

●回想・山小屋など

 

サーナとの楽しかったシーンがいくつか短く。

 

テイルの声「忘れようとした」

 

 

 

 

●現実・ベースキャンプ・内

 

テイル「そんなヤツの命なんか、惜しくない。誰も惜しまない」

 

 

 

 

●回想

 

別れ際に銃を渡したラスカス。

 

その死を知り、「あの山小屋に行かなければ」と自責するテイル。サーナがショックで膝から崩れ、テイルの胸で泣く。

 

 

 

 

●現実・ベースキャンプ・内

 

ルージ「つらいことはそういうもんじゃない。忘れたがって自然よ人間」

 

テイル「それに逆らうのも人間じゃないか?」

 

ルージ「――かもしれないけど」

 

テイル「だいじょうぶ。覚悟はできてる。やり遂げるさ」

 

ルージ「――うん」

 

 

 

 


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