物語論あれこれ【山田太一さんについて(1)】 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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以前シナリオをよく読んだ、と書いた時に山田太一さんの名を挙げ、「一番影響を受けた」と書きました。

最初に触れた作品はテレビドラマ「早春スケッチブック」のシナリオです。お互いに連れ子同士で結婚した夫婦、その息子に本当の父親が接触し、平和だった家庭が乱されていきます。父親は平凡な生活を送る息子たちに向かって「なんてェ暮らしをしてるんだ」と罵声を浴びせます。山田さんは自分自身に向ける罵声としてこういう物語の必要を感じたそうです。多くのホームドラマを書いてきたライターとしてやるべきことのひとつとも思ったそうです。そういう視点があまりに足りないと。

読後の感想を一言で言うと驚きでした。テレビドラマでここまでできるんだ、という驚きです。

それから読めるシナリオは読み、見られるドラマはなるべく見ました。それでも多くの作品のほんの一部です。その一部についてもすべては書けないので、特に印象深かったものを以下に。

「それぞれの秋」 大学生の主人公が家族の隠された秘密を知っていくホームドラマです。1973年放送。全15回。山田さんは「とにかく本当らしく」と努めたそうです。それまでのホームドラマは家族で和気あいあいのものが多く、ほとんど現実を反映していない。本当の家族をリアルに描くだけで意味がある、と。

このあたりが好きなんですね。ウケるか当たるかも大事だけど世の中に響くか、役に立つか。それは一見重たく感じるかもしれませんが、そういう意思があるのとないのではわけが違う。

小倉一郎さんが演じた三枚目の主人公のナレーションがとてもいいです。家族の秘密を徐々に知っていくのでシリアスと言えばシリアスな内容ですが、主人公のおかげでほっこりする。展開は今のドラマと比べるとスローかもしれません。ほとんど進んでないような回もあって、しかしホームドラマはそれがいい、と思いました。

「男たちの旅路」 鶴田浩二さん主演の警備会社を舞台にしたドラマです。3回で1部のシリーズが飛び飛びに続き、なかでも残ってるのは第4部の「影の領域」と「車輪の一歩」

ただ「影の領域」を味わうには前話の「流氷」もその前のシリーズも見てないといけないので、機会があっても単体ではご覧になりませんように。

不正義、その必要悪、それに目をつぶろうとする者、しかし見過ごさないこと、要約すると台無しになりそうなのであとは控えますが、ラストがすごくいい。

「車輪の一歩」は車椅子を使う障害者たちの話です。彼らの起こす騒動に警備員の兄妹が巻き込まれていく。第4部はこの田舎から出てきた兄妹によって事件や他者に深く関わっていきます。

「男たちの旅路」の特徴は基本一話完結の事件モノで「それぞれの秋」などの連続ドラマ、ホームドラマに比べるとストーリーが引き締まっている点。見事なものですが、山田さんとしてはありがちなドラマ、ご自身の力はホームドラマでこそ発揮できる、と考えていた気がします。同じ鶴田浩二さん主演の「シャツの店」は時代遅れの男が家を出ていった妻とよりを戻すまでのドラマですが、これは日常のやりとり、機微の描写が繊細で素晴らしい。

「岸辺のアルバム」は大学受験に失敗した息子が家族の秘密を知っていく連続ドラマ。つくりは「それぞれの秋」と似てますが内容がよりハードになって家庭の崩壊(実際には離散せずになんとか形を保ったまま)を描き、「岸辺のアルバム以後のドラマは…」というような表現をされるほどのエポックメーキングな作品とのこと。

山田さん自身の新聞連載小説を原作にしてますが一部設定や構成などが変わってます。八千草薫さん演じる主人公の主婦が浮気に走るのですが、そこに至るまでの孤独を丹念に描いてます。家庭で見るテレビ、そこで流れるテレビドラマということを存分に活かしたつくりです。

「ふぞろいの林檎たち」は落ちこぼれの学生たちの群像劇。パート4まで作られ、はじめは学生だった主人公たちが社会に出て結婚し親になっていきます。バラバラの物語が時に交わり時にバラバラのままスピーディーに進行するのがとてもいい。

山田さんのドラマの特徴にこの速さ、そして距離感があると思います。感情移入するか否かは視聴者まかせ、とにかくどんどん進行する。キャラクターの饒舌や丁々発止もその1つかもしれません。ただしこれらは余計な演出やアドリブを挟ませない工夫のような気もします。山田さんが不快感を示したパート3の前半にはそういう演出が散見されました。その頃のトレンディドラマの影響やあまり意味がないタバコのポイ捨てなど。

そもそも演出は「目立たない工夫」でしょう。視聴者には気づかれないこそで、特に山田さんのリアル志向のドラマには奇抜な演出は合わない、そこだけ浮いてしまう気がします。

まぁシナリオを読んでからドラマを見る、という機会もあったので、その順番だと自分のイメージが勝つ、あとから見た映像がどうしてもしっくり来ない、ということがあるはずですから、あまり言い張れませんが。

そのほか山田脚本の特徴としては、そうですね、同時期によく読んだ倉本聰さんや向田邦子さんと比べましょう。
 

 


 

 

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