物語論あれこれ【潔く柔く】 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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いくえみ綾さんの作品にはじめて触れたのは「彼の手も声も」です。別冊マーガレットに連載時、紡木たくさんの「瞬きもせず」と共に毎回楽しみにしてました。

この二氏については他の作家と「何かが違う」と思い、それから作品を遡っていくえみ綾さんについては「POPS」等々ずいぶん読みました。

今でも信頼できる作家さんのひとり、というか最も信頼できる作家さんです。「信頼」と書くとなんだか偉そうですが、この人の書くのは間違いない、買って損がない、と思える、そういう意味です。やっぱり偉そうかな?

と言いつつ近作はなかなか読めてないのですが、ともあれいまだ絶対的信頼を置いていて、自分としては珍しい。ひとりの作家さんにこういう思いはあまり抱かないので。

好きな作品はたくさんあります。「POPS」「彼の手も声も」は伏線の回収やひねった構成、そのうまさに舌を巻きました。

少し作風が変わってきた? と感じたのは「I LOVE HER」の前後でしょうか。いい意味で流れに任せる感じ、あまり後まで考えずに進めている感じがしました。1つ1つこなしていけばなんとかなるだろうという余裕のようなもの。筆に任せてもそれなりにまとまるという自信。「バラ色の明日」などはその最たるものな気がします。

短いものにも好きな作品はたくさんあって、読みきりは勿論、ほかにも「みつめていたい」「子供の庭」「ハニバニ!」「オススメボーイフレンド」など。

特に「子供の庭」はド直球でいいです。泣けます。ムダなくスパンと切り上げて心地いい。

同じホームドラマに「かの人や月」がありますが、これはガラッと変わって1つ1つのエピソードをその都度つくっていった印象です。別視点になるとキャラクターの印象が微妙に違って、それは矛盾というより人はそんなもの、視点によって異なるもの、それを誤解を怖れず置く感じ、読者に解釈を任せる感じが潔い。

不確かなものが重なって醸し出す厚み。視点が移ることで読者を引き込みつつ物語との距離を保つ距離感。とても趣味がいいと思います。

しかし家族が題材ではそう話が広がらず縛りもあって、それらが若者の群像劇「潔く柔く」につながったのでは? と予想します。

そしておそらくこの作品も、スタート時にはラストまで決めてなく、書きたいものを書きながらいつかつながるだろうと筆に任せて進めていったのではないかと。

そのなかで心に傷を負った少女の件は終わりにできず、彼女が再生するには同様の傷を持った相手が必要、ということで異なる舞台に登場させ、別々だった2つの線が1つに絞られていく。しかし簡単にまとまってはいかにも収めたようなので、なかなか進めず紆余曲折、読者のツッコミを回避する。

このあたりはとても慎重で繊細です。複雑に入り組んだ関係や事情、先に描いたことは必ず回収しなければいけない。しかし強引に進めてはいけない。キャラクターに対し矛盾なく、それでいて充分なおもしろさを維持して納得いくラストにしないといけない。いくつもハードルがあって苦労されたろうなと思います。

それを文句なくクリアし、可能にしたのはいくえみ綾さんの特長、タイトルにも含まれる「柔らかさ」「柔軟さ」ではないかと。

最初に書いた紡木たくさんが理想や純粋などの「上」をめざしたのに対し、いくえみ綾さんは逆方向、人のマイナス面と向き合い、その否定と肯定をバランスよく描いて広がりを見せた印象です。

リアル志向。読者から離れず身近な人々を材料に様々な物語をつくり、ゆえにいつも新しくどこに連れていかれるかわからないワクワク感。それでいてウケのいい甘さには陥らない注意深さ。しかしテーマの押しつけにならないようエンタメとしてのポイントを押える安定感。おそらくそれらの複合条件が合格ラインとしてご自身にあるんでは、と思います。それにそぐわないものは容赦なく切り捨てる。諦める。そんな潔さを感じます。これもタイトルにありますね。

「潔く柔く」というタイトルは作者のスタンスもあらわしているのかもしれません。このスタンスのブレなさが「間違いない」という安心感につながっているんだろうな、と思います。単に自分と合う合わないだけかもしれませんが、最近ドラマ化や映画化が続いてとても嬉しい。やっとかよ世間、おせーよ、と思わないでもないですが。

 


 

 

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