健次郎「してもダメな時ある」
真歩「めいっぱいした?」
夏美「そういう無理できるのは、気持ちあってでしょ」
真歩「まぁ」
夏美「真歩には申し訳ないけど、昇太にも」
真歩「――(目を伏せる)」
夏美「ふたりは立派に自立したし、あとはもう自分のね、幸せだけ考えたいの」
真歩「――」
健次郎「今まで幸せじゃなかったみたいだね」
夏美「え?」
健次郎「子供の犠牲になったような」
夏美「そんなつもりは」
健次郎「俺はそんなじゃなかったね。子供がいたからがんばれたし、幸せな時いっぱいあった」
夏美「私だってそうよ。ひとりでいいカッコしないで。大半こっちに任せて」
健次郎「子供にそんなこと言うのはないね」
夏美「犠牲になったつもりはない。でも自由はなかった。自由にできるようになったんだからいいじゃないって、それだけ」
健次郎「いいね。賛成だね。俺だって自由にしてたわけじゃない」
夏美「当然でしょ。特別立派みたいに言わないで」
健次郎「でも自分ばかりと思ってるんだ。我慢してたのは私だけ。だから好きにしたいなんて堂々と言える」
夏美「自分だってそうでしょ。別れたくないの?」
健次郎「そんなわけあるかい。ひとりになって生き直したいね」
真歩「もういい! やめて!(大声)」
健次郎「――」
真歩「(静かに)もうわかったから。喧嘩しないで」
夏美「――」
●線路(後日昼)
電車が通過する。
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