星の瞳をもつ男とけんかえれじい | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

高橋英樹は高校在学中の1961年に第5期日活ニューフェースとして、小林旭主演の『高原児』で端役デビュー。翌62年からは事故死した赤木圭一郎の代役的存在としてアクション映画や青春映画に出演。『若くて、悪くて、凄いこいつら』や『星の瞳をもつ男』に主演しましたが、演技は未熟。しかし、経験を積むうちに『けんかえれじい』では好演。

『若くて、悪くて、凄いこいつら』(1962年/監督:中平康)は、あらん限りの青春と若さを満喫している大学生グループが、財界汚職に青春の激情を叩きつける青春アクション。

実業界の大立者・佐倉(清水将夫)とひょんなことから知りあった浩(高橋英樹)・新子(和泉雅子)・俊夫(和田浩二)・和正(山内賢)・篤子(清水まゆみ)の5人の若者は、佐倉が所持している政財界の汚職を記録した極秘メモと、佐倉の娘(進千賀子)をめぐって財界のボス(三島雅夫)や殺し屋(葉山良二)と戦うことになり……

高橋英樹が主演なのですが、一番下手くそ。おまけに下手な主題歌(作曲は黛敏郎)を聴かせてくれます。原作が柴田錬三郎で、現実離れしたマンガチックな能天気映画。中平康の演出にも才気走ったところがなく、はっきり言ってトホホ作品です。

 

『星の瞳をもつ男』(1962年/監督:西河克己)は、兄弟愛を描いた青春映画。

弟・光郎(山内賢)のために傷害事件を起こした英司(高橋英樹)が出所して家に戻ると、光郎は人気歌手になっています。しかし、光郎は家には寄り付かず、老いた母は寂しい思いをしているんですな。英司は幼馴染の冴子(吉永小百合)と逢い、彼女の父親(中村是好)のオートバイ工場で働きはじめます。芸大入学の夢をもっている冴子ですが、工場は借金経営。元気を出そうと冴子が弾くオモチャのピアノの伴奏で英司が歌うのを音楽事務所の千紗(吉行和子)が偶然聞きます。その歌声に千紗は惹かれて英司をスカウト。光郎も千紗の事務所におり、兄弟で売り出しますが英司に人気が集まり、光郎は英司に嫉妬。英司は光郎を昔のような弟にしたいと思っており……

高橋英樹が歌う主題歌レコードを持っていて、内容が知りたくて観賞したのですが、これがトンデモ映画。高橋英樹が主題歌だけでなく、劇中で歌いまくる青春音楽映画。山内賢や山内賢の恋人役の田代みどりの歌は聴けても、高橋英樹はねェ。ラストで仲直りした山内賢とミュージカル仕立てで歌うシーンは、あまりの陳腐さに目がテンになりましたよ。吉永小百合とのデュエット・シーンもあるし、珍品映画として記憶に残る作品で~す。

 

『けんかえれじい』(1966年/監督:鈴木清順)は、喧嘩にあけくれる若者の青春物語です。

時代は昭和10年代のはじめ、岡山中学の南部麒六(高橋英樹)は“喧嘩キロク”として有名な存在。キロクは喧嘩のコツを教えてもらった先輩スッポン(川津祐介)の勧めでOSMS団に入ります。OSMS団は岡山中学5年生タクアン(片岡光雄)を団長とするガリガリの硬派集団。OSMS団と関中のカッパ団との喧嘩でキロクは大暴れし、副団長になります。しかし、反逆精神のほとばしるまま、軍事教練の時間に陸軍将校の教官(佐野浅雄)にたてつき、憲兵隊ににらまれて親戚のいる福島の喜多方中学へ転校。そこでも、喜多方中のライバルである会津若松の硬派集団・昭和白虎隊と喧嘩になり……

キロクの喧嘩好きは、ありあまる性欲の吐け口に困っているからなんですな。下宿先の娘・道子(浅野順子)が好きなんですが、指一本触れるどころか、まともに口もきけず悶々としています。敬虔なクリスチャンである道子は、野蛮なキロクには情操教育が必要と、部屋にキロクを引き入れてピアノを練習させる始末。キロクはというと、息子が勃起してくると彼女がいないのを見はからって、ピアノのキーをポンポンと息子で演奏。若者のセックスの悩みのユーモラスな表現、それを喧嘩で発散させる痛快さを詩情豊かに描いています。226事件の北一輝との遭遇で、右翼的情念への痛切な憧憬に変わるラストの転調は見事。あの時代なりの苦痛とロマンチシズムは清順自身の青春像のような気がします。