2006年06月30日

尾崎秀樹・訳  『呉子』

テーマ:人文地理
尾崎 秀樹
呉子

ご存知、『孫子』と並び称される兵法書。

『呉子』は、『孫子』ほどには、兵家思想としては体系化されておらず、文体の格調高さやでも一歩を譲る。

が、『呉子』の魅力は、なんといっても、著者である呉起その人の強烈なキャラクターにあるといえる。


『孫子』の著者である孫武については、存在自体が曖昧模糊としており、その事蹟は、ほとんど知られていない。

これに対して、呉起の場合、軍人として、政治家としての華々しい事蹟は、史記列伝などにも詳しく記されている。


呉起は、徹底した功利主義者であり、目的のためには、あらゆるものを犠牲にしても厭わない残忍な性格の持ち主であったようである。

しかしながら、こと戦争の指揮と、政治改革を断行する先見性と行動力に関しては、誰もが認めざるをえないほどの才能をもっていたが、あまりに手腕がありすぎるゆえに敵も多かったようだ。

それが、悲劇的な最期を遂げる要因でもあった。

その起伏に富んだドラマチックな人生を知った後で、『呉子』を読めば、感慨もまたひとしおというところだろう。

ついでに、『呉子』の中で、特に気に入った文章を引用しておく。

現実主義者だった呉起の面目躍如たる言葉である。


――呉子曰く、「凡そ兵戦の場は、屍を止むるの地、死を必とすれば則ち生き、生を幸とすれば則ち死す。

其の善く将たるもの、漏船の中に坐し、焼屋の下に伏するが如く、智者をして謀るに及ばず、勇者をして怒るに及ばざりしむれば、敵を受けて可なり。

故に曰く、『兵を用いるの害は猶予最も大なり。三軍の災は狐疑より生ず』」と。



切れ味: 可


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2006年06月06日

西川靖二  『韓非子――ビギナーズ・クラシックス中国の古典』

テーマ:人文地理
西川 靖二
韓非子―ビギナーズ・クラシックス中国の古典

徹底した人間性悪説に基づいた法治主義によって、君主は政治をすべきことを説いた古代中国の法家思想。

その代表者が、韓非子である。

かの『君主論』を著したフィレンツェ共和国のマキアヴェッリよりも、実に千七百年以上も前に、それに勝るとも劣らない君主論を説いた人物がいたとは。

さすがは中国四千年(いや五千年か)の歴史の厚みは違います。


で、本書は、その『韓非子』のエッセンスを抄訳した入門書です。

以前、紹介した『老子・荘子 』と同様、この角川文庫のビギナーズ・クラシックスは、どれも、なかなかいい仕上がりになっていると思う。

本書も、大変読みやすく、かつ、著者の説明がよく行き届いている。

声を出しながら読むといいでしょう。


そもそも、日本人の間では、孔孟などの儒教や、老荘思想、そして孫子などといった兵法書に比べると、『韓非子』は、あまり馴染みがないようである。

しかしながら、今後、政治やビジネスその他において、アングロサクソンはもとより、中国とも苛烈な競争が激化していく一方であることは、間違いないのだから、、中国人の基本的な思考・行動形式の中に伝統的に培われているであろう法家思想(マキアヴェリズム)を理解することは、大変重要なことなのではないかと思う。

切れ味: 良


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野村 茂夫

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2006年05月05日

野村 茂夫  『老子・荘子―ビギナーズ・クラシックス中国の古典』

テーマ:人文地理
野村 茂夫
老子・荘子―ビギナーズ・クラシックス中国の古典

抄訳であるが、書き下し文の字が大きく、行間も程よくとれていて、大変読みやすい。

思わず声を出して朗読をしたくなる。

入門書としては、よく出来ていると思う。


老子・荘子ともに、浮世離れした思想で、まあ、一言でいえば、自然に還れ、といったところでしょうか。

個人的な好みとしては、荘子の斉物論編にある「胡蝶の夢」が一番いいですね。

司馬遼太郎の小説にも、同名の作品がありましたっけ。

昭和の大横綱であった双葉山が七十連勝を阻まれ、連敗を喫した時、後援者に打った電報の文章は、「ワレイマダモツケイタリエズ」だったが、そのエピソードで有名になった荘子・達生編の「木鶏」も捨てがたいのだが。

とにかく、のんびりとした休日を読書に遊びたい方にはお勧めの一冊であります。


切れ味: 可


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2006年03月13日

竹田 晃  『曹操』

テーマ:人文地理
竹田 晃
曹操―三国志の奸雄

ご存知、「三国志」の英雄、曹操の人物評伝である。

若き日の曹操が、高名な人相見に、自分の人物評を求めたところ、「あなたは治世では優れた能吏であるが、乱世では姦雄になるだろう」と語ったエピソードは、あまりにも有名である。

著者も、曹操という人物の本質は、そこにあるという見方に立っている。

ただし、それは、曹操が、有能ではあるが、冷酷非情な悪人であるという意味ではない。


いわゆる一般に流布している「三国志」では、主役である劉備や諸葛孔明のの最大のライバルとして、その悪役ぶりばかりが印象づけられてしまっている曹操であるが、実際には、曹操こそが、この三国時代において、その人物としての力量、識見が最も優れていたようだ。

誰よりも、有能な人材を欲し、積極的に人材登用したのも曹操であるし、魏・呉・蜀の三国の中で、最も民政に気を配ったのも曹操である。

しかも、彼は卓越した指導者というだけてだはなく、後世に残るほどの名高い漢詩をいくつも遺した詩人としても側面も持っていた。

自他ともに認める英雄であるだけに、曹操には、確かに残酷かつ冷酷な面もあるが、その一方で、感受性豊かな詩をものす思索家でもあったわけで、この多面性が、曹操の人間的な魅力なのであろう。

本書では、最後の章で、詩人としての曹操にかなりページを割いて言及している。

個人的には、この章が一番興味深かった。


最後に、著者の曹操に対する見解を引用したい――


曹操のもつ多彩な表情に対しては、古来、毀誉褒貶、実にさまざまな評価が下されてきた。まことに端倪すべからざる男である。しかしながら、その政治家としての軌跡を追い、詩人として遺した作品を味わってみて、私は、さまざまな毀誉褒貶を超えて、曹操は「新時代を画した」という意味において、まさしく英雄の名に値する人物だった、と同時に、彼はまた、すこぶる感受性豊かな、奥行きの深い人間らしい人間であった、とも思うのである。




切れ味: 可


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2006年01月24日

下村湖人  『論語物語』

テーマ:人文地理
下村 湖人
論語物語

『論語』は、二千数百年前、古代中国に生きた人、孔子が語ったと伝えられる言葉をまとめた箴言集のようなものである。

門弟たちの問いに対して、孔子が「子いわく~」という形で答える問答形式になっている。

拝金主義の横行する現代にあっては、人の生きる道とは何かを説いた『論語』などは、アナクロニズムの象徴のようなものに映るかもしれない。

しかしながら、功利主義一辺倒に傾きつつある現在こそ、相手を思いやる精神と実行を説いた孔子の訓えを見直してみる必要があるのかもしれない。

が、さすがに『論語』そのものを紐解くのは億劫なので、代わりにこの本を読んでみた。

これは『論語』に精通した著者が、現代人の視点と感覚で『論語』を捉え直し、孔子と門弟たちの成長物語として再構築し、蘇らせたものである。


全28話の物語は、どれもが独立した作品になっているが、同時に、全体として連続した物語として読むこともできる。


少々長いが、本書の序文に記された著者の文章を引用したい。


――『論語』は「天の書」であるとともに「地の書」である。孔子は一生こつこつと地上を歩きながら、天の言葉を語るようになった人である。天の言葉は語ったが、彼には神秘もなければ、奇蹟もなかった。いわば、地の声をもって天の言葉を語った人である。

彼の門人たちも、彼にならって天の言葉を語ろうとした。しかし彼らの多くは結局、地の言葉しか語ることができなかった。

われわれは、孔子の天の言葉によって教えられるとともに、彼らの地の言葉によって反省させられるところが非常に多い。

こうした『論語』のなかの言葉を、読過の際の感激にまかせて、それぞれに小さな物語に仕立ててみたいというのが本書の意図である。

この物語において、孔子の門人たちは二千数百年前の中国人としてよりも、われわれの周囲にざらに見いだしうるふつうの人間として描かれている。

『論語』が歴史でなくて、心の書であり、人類の胸に、時所を超越して生かさるべきものであるならば、われわれが、それを現代人の意識をもって読み、現代人の心理をもって解剖し、そしてわれわれ自身の姿をそのその中に見いだそうと努めることは、必ずしも『論語』そのものに対する冒涜ではなかろうと信ずる。


てなわけで、どれも短いながら、滋味のある物語ばかりだ。そして、折に触れて、何度でも繰り返し読んでみたくもなる。得がたい一冊である。



切れ味: 良


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2006年01月12日

安岡正篤  『十八史略』

テーマ:人文地理
安岡 正篤
十八史略(上) 激動に生きる 強さの活学

そもそも十八史略とは、この本のまえがきを引用すれば――


古代三皇五帝から南宋滅亡までの人間ドラマが描かれている。

今、私達が日常何気なく引用している言句、格言、四字熟語などの原典が豊富に収められており、中国の歴史、王朝史を知るための基礎的入門書として、まことに恰好な史書といえる。


となる。

司馬遷の『史記』には、名実ともに及ばないが、それでも、かなり著名な史書であることは確かである。


以前、陳舜臣の『小説 十八史略』を読んだことがある。

春秋戦国時代から漢楚の興亡、そして三国志など、激動の時代がドラマチックに描かれており、また、大陸的なスケールに満ち溢れた英雄、悪人、悪女などが次々に出てきて、飽きさせない。

ただ、あまりに長すぎるのには、少々閉口した覚えがある。


そこで、本書である。

上下二巻とコンパクトなのがいい。

この通史の中で、特に、見所と思われる箇所の原文を抜粋しつつ、東洋思想に博識な著者の解説と解釈が加わって構成されている。

もともとは、著者が、講演会だかで講義したものが、元になっているので、終始、話し言葉で進んでいくので、とても読みやすい。

講演禄のせいか、時に本筋から離れた余談に流れることもしばしば。

しかし、その余談での薀蓄が、結構面白かったりするのだ。


著者の安岡正篤は、戦前から、陽明学者として知られ、戦前戦後の政界の黒幕的存在であったとも噂される人物。

ぶっちゃけ、右翼思想の親玉のようなもんである。

本書の中でも、単に古典の解釈にとどまらず、それらの歴史的出来事や人物論を、現代の社会情勢などと結びつけて語っていたりするのだが、折に触れて、共産党の支配する中国などをあしざまに罵倒する言動も多く、辟易させられたりもする。


なお、現在、テレビ番組に出まくって荒稼ぎをしている占い師の細木数子が、晩年の安岡と知遇を得て、あげく結婚したことで、世に出るきっかけをつくったことは、以前、このブログで紹介した佐野眞一の『あぶく銭師たちよ――昭和虚人伝 』に、その詳細が書かれている。


ともあれ、著者のイデオロギーによるフィルターが濃厚にかかっているとはいえ、十八史略のエッセンスを大掴みにするには、お手頃の本であろう。



切れ味: 可


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2005年12月07日

前田英樹 『宮本武蔵 「五輪書」の哲学』

テーマ:人文地理
前田 英樹
宮本武蔵『五輪書』の哲学


著者は、フランス文学や言語学を専門とする立教大学文学部の教授。

そして、時代小説やドラマで有名な柳生家の家伝である新陰流剣術の遣い手でもある。

古武術家の甲野善紀氏とも共著を出している(下記のお勧めの関連書籍を参照)。


それで、本書であるが、タイトルのままの内容です。

つまり、ろくに武術を齧ったこともない頭でっかちの小説家や、コンサルタントと称するような輩が書くような「五輪書に学ぶ~」式の、愚にもつかないものとは異なり、ストレートに武蔵その人の思想を捉えようと試みているのです。


あとがきで、著者もはっきりと書いております。


――この小さな本で私が書いたことは、『五輪書』という自伝的思想書がはっきりと示す意味であって、それについての私の想像でも付会でも解釈でさえもない。


著者は、『五輪書』の中で、武蔵が使っている「実の道」という言葉に着目している。


――兵法の道も、「商いの道」も、職として身に付けてゆくべき技であることに違いはないのです。

では、なぜその技を「道」と言うのか。

それは、これらの技がそれぞれの本姓において深く、極めて精確に通じ合っているものだからでしょう。

通じ合うこれらの道の総体を、武蔵は、「実の道」と呼んでいました。


――彼もまた、徳川の社会秩序が確立してしまった時代に、兵法という自己経験の意味を、一人でどこまでも問い直した人です。

武蔵は、まずその経験を、自分を取り巻くさまざまな職の技の中に置いた。

置いただけではなく、それらの職能を根源において同じ一つの生にしているもの、彼の言う「実の道」の本体を掴み取ろうとしました。


すなわち、武蔵にとって、兵法を極めることは、あらゆる道具を用いる職の技と根底で通じる「実の道」を極めることであったようだ。

彼は、生涯を賭して、「実の道」を追求した求道者であり、その「実の道」の底の底まで極め尽くし、言葉に結晶化させたものが、『五輪書』であったのであろう。

そういう事を知ったうえで、『五輪書』を読んでみれば、これまでのイメージとは違った武蔵の姿が立ち現われてくるに違いない。


また、武蔵の思想を、ほぼ同時代のヨーロッパに生きたデカルトの思想と対比させて考察しているのもユニークである。


切れ味: 良


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2005年09月19日

 グィッチャルディーニ 『フィレンツェ名門貴族の処世術 リコルディ』

テーマ:人文地理
フランチェスコ グィッチャルディーニ, Francesco Guicciardini, 永井 三明
フィレンツェ名門貴族の処世術―リコルディ


内外の危機に揺れたイタリア・ルネサンスの時代を生き抜いた政治家の手になる洞察に満ちた世渡りの箴言集。
「リコルディ」とは、覚え書とでもいった意味。


著者のグイッチャルディーニは、フィレンツェの名門貴族の出身で、外交を中心に活躍した政治家。
有名なマキァヴェッリは、同時代の人である。


そのマキァヴェッリの『君主論』などの政治論集は、公の刊行を目的とした著作物であるが、グイッチャルディーニの『リコルディ』は、子孫のための私家蔵本であり、出版することを想定していない。

そのせいもあってか、当時としては、マキアヴェッリよりも、遥かに有名人であったにも関わらず、後世では、彼も、『リコルディ』も、あまり認知されていないようである。
その『リコルディ』は、家伝書である分、取り上げている事柄は卑近であり、自らの経験から引き出した世渡りのための術を説いている。


一言でいえば、偽善の勧めであるが、さすがルネサンス時代の人だけに、偽善の術さえもが、洗練されている。


偽善が、そのまま世間に明け透けに見えてしまえば、嘲笑や軽蔑、はては罵倒と破滅の憂き目に遭うだろうが、それを、洗練された振舞いや態度、行為によって、巧みに覆い隠せば、逆に、世間からの賞賛、名声、人望すら得ることすらできる。
現に、グィッチャルディーニ自身が、そうやって、生き抜いてきたのである。
その含蓄とアイロニカルに満ちた箴言の数々は、説得力がある。


同時代人のマキアヴェッリの著作物と読み比べてみるのも面白い。
グィッチャルディーニ自身は、多少、似たようなキャリアを持ったマキアヴェッリに対して、かなり対抗意識を持っていたようである。


切れ味: 良


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2005年08月14日

中西輝政 『大英帝国衰亡史』

テーマ:人文地理
中西 輝政
大英帝国衰亡史 PHP文庫

近代の世界史は、同時に、「パクス・ブリタニカ」の時代であったともいえる。
その大英帝国の興隆~衰亡期の変遷を題材にしている。


本書の特色としては、大英帝国の興隆と繁栄、そして衰退の要因を、各時代を担った指導者層の、その貴族的な精神性に置いている点である。
エスタブリッシュメントの「威信と精神力」こそが、大英帝国の支配と統治の基礎を成している。
この特異な「威信」のシステムが、小さな島国で、かつ資源も限られていた大英帝国を支えていた。
だから、エリートの価値観や精神構造を理解する事が、興隆と衰退の本質を解明することにもなる――。
というわけだ。


この「エリート史観」(著者は前書きで否定しているが)ともいえる考え方には、賛否両論があるだろう。
ただ、著者の視点が、首尾一貫しているので、混乱せずに読み通せる。
もっとも、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』にあやかったと思われる仰々しいタイトルに、中身が追いついていない印象も受けたが。
ごく簡単に、近現代のイギリス史をおさらいしたいと思っている人には、入門書として、いい本かもしれない。



切れ味: 可


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2005年07月31日

塩野七生 『ローマから日本が見える』

テーマ:人文地理
塩野 七生
ローマから日本が見える

本書は、今も執筆中の『ローマ人の物語 』シリーズ中の、主に第一巻~六巻までの内容を、初心者向けに、コンパクトにまとめたものである。


紀元前八世紀まで遡るローマ建国から、王政、共和政を経て、帝政ローマへと移行し、「パクス・ロマーナ」と呼ばれる繁栄を謳歌する覇権を確立する時期までの、つまりは、古代ローマ帝国の興隆期を扱っている。


著者は、この本の中で、古代ローマ人の利点をいくつも挙げているが、その最大の長所は「敗者さえも自分たちに同化させた」ことに尽きるという。
この敗者同化政策は、建国以来、帝政全盛時まで、一貫していた伝統的政策であり、これがローマ強大化の最大の要因であったと説いている。


たしかに、ローマ帝国滅亡後の覇権国家は、いずれも、敗者(敗戦国、植民地)を占領・支配し、徹底的に搾取し、勝者と敗者の間に、埋めることのできない大きな溝を設けてきた。
が、そのやり方は、敗者の反撥と怨恨を蓄積させるだけなので、一時の繁栄は収めても、すぐに瓦解するものであったことは、歴史が証明している。


そう考えれば、古代ローマ人の「敗者をも同化させる」やり方は、人間というものを熟知した、極めて賢明なものであったといえるだろう。


著者の、古代ローマに対する思いには、贔屓の引き倒しのように思えるところもあるが(特にユリウス・カエサルを持ち上げすぎ)、この本を読む限り、古代のローマ人たちが、歴史上でも、傑出した人たちであったことに異論はない。


ということで、世界史上で初めての、かつ最長の普遍帝国を築き上げた古代ローマ人を知ることは、混迷している現代の世界情勢や日本の進路を考えるうえで、一つの参考材料になるかもしれない。



切れ味: 可







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