2005年08月21日

岩井志麻仔 『ぼっけえ、きょうてえ』

テーマ:ホラー小説
岩井 志麻子
ぼっけえ、きょうてえ

第六回ホラー小説大賞受賞作品。
本の題名になっている「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山地方の方言で、「とても怖い」の意――。

との説明文が添えられている。


表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」以下、四つの短編が収められている。
いずれの作品も、物語の時代設定は明治、その舞台は岡山地方である。
そして、典型的な怪談仕立ての作品ばかりで構成されている。



したがって、ホラー小説としての目新しさはない。
しかし、作品は、どれも伝統的な日本特有の湿った土壌からしか、醸成し得ないものばかりだ。
それを効果的に演出するためには、どうしても、現代とは異なる明治という時代設定と、昔からの風習と土着性が色濃く残る地方都市という舞台が必要だったのだろう(まあ、著者が岡山出身というのも大きいとは思うけれど)。


どの作品も、伝統と因習に縛られた人間関係の息苦しさと、狭い村意識から来る、自分たちとは異質なものへの畏怖と侮蔑、そして憎悪の感情が、怪異な事件を生み落とす仕掛けになっている。


そして、死の腐敗臭が漂ってくるような濃密な愛憎劇から引き起こされる怪異話は、派手な演出はないが、頁を繰るにつれ、次第に怖気が這い登ってくる感覚に浸れる。


地方の方言を駆使した文体も、なかなか表現力に富んでいて、美しくて、残酷で、不気味な物語に上手く溶け込んでいる。


個人的には、流行のサイコパスや超常現象をテーマにしたものよりも、土俗的な怪談が好みなので、堪能できました。



切れ味: 可


お勧めの関連書籍

石川 淳

新釈雨月物語

横溝 正史

八つ墓村

岩井 志麻子

岡山女

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)
2005年05月25日

貴志祐介 『黒い家』

テーマ:ホラー小説
著者: 貴志 祐介
タイトル: 黒い家

サイコスリラーとしては、かなりの出来である。
保険金搾取のためには、殺傷行為も厭わない猟奇的な犯人のキャラが、際立っている。
この犯人の凄味は、只事ではありません。
雫井脩介の『火の粉 』に出てくるサイコ野郎も、真っ青です。


でも、最近は、日本でも、猟奇的な犯罪が頻発していることを考えると、実際に、こんな奴がいても、なんら不思議ではない。
事実が小説をはるかに凌駕する。
コワい世の中になったものです。


なお、この作品は、数年前に、映画化もされている。
原作の犯人像のイメージとは全然違っていたが、大竹しのぶの怪演は光っていた。



切れ味: 良








お勧めの関連書籍

雫井 脩介

火の粉


AD
いいね!した人  |  リブログ(0)
2005年05月11日

 高橋克彦 『四谷怪談』

テーマ:ホラー小説
著者: 高橋 克彦
タイトル: 高橋克彦版 四谷怪談

先日、『呪怨』という訳の分からないホラー映画のDVDを観たせいか、急に古典的な怪談を読みたくなり、高橋版四谷怪談を読んだ。
これは、高橋克彦が、鶴屋南北の原作を、そのストーリーにほぼ沿うかたちで、新訳したものだ。


これを読むと、テレビ時代劇で見たことのある四谷怪談は、原作のほんの一部にずきなかったことが分かる。
さらに、この怪談が、赤穂浪士の忠臣蔵の外伝という位置づけにあることも。
元禄の江戸っ子たちを熱狂させた忠臣蔵の美名の陰に咲いた徒花。
破滅へと走らざるをえなかった伊右衛門と、その犠牲となったお岩の悲劇は、救いのない物語である。


伊右衛門に裏切られ、毒を盛られたお岩が、なかば崩れた顔を手鏡に映し、櫛で髪をすくシーンは見せ場の一つ。
櫛を入れるごとに、髪が頭皮から剥がれて抜け落ちていく凄惨さ。
抜けた髪の毛が絡まりついた櫛を握り締めながら、呪詛の言葉を吐くお岩の鬼気迫るシーンは圧巻。
死んだお岩を、戸板に釘で打ちつけて、川に流す描写の陰惨さも怖い。


でも、最後の最後で、怪談からラブストーリーに昇華されているのは意外でもあり、救いでもあった。



切れ味: 可




お勧めの関連書籍

岩井 志麻子

ぼっけえ、きょうてえ

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。