2006年07月27日

金田秀治  『超トヨタ式チェンジリーダー』

テーマ:ビジネス書
金田 秀治
超トヨタ式チェンジリーダー

陳腐なタイトルであるが、中身は、なかなか読み応えがある。


トヨタ方式は、現場部門における改善活動の徹底化によって、自動車業界のみならず、他の産業にも大きな影響を与え続けているが、本書で、著者が提案しているのは、それを内包しつつ、さらに加えて、「部門戦略」の発想であり、その「仕組み」の導入だ。


欧米型のトップダウンによる経営戦略方式でもなく、トヨタを代表とする日本企業に見られる、現場からのボトムアップ型でもない、第三の戦略ゾーンが、開発・生産・販売などの各部門による「部門戦略」の構築だという。そして、それを担う中心的な存在が、チェンジリーダーともいうべき中間管理職層になる。

で、このような貧相なタイトルになってしまったのだろう。


著者は、経営コンサルタントであるが、元々はトヨタグループの生産管理部門を渡り歩いた人であるだけに、その豊富な体験に基づいた語りには、なかなかの説得力がある。

また、単なる現場力の強化に止まることなく、それを更に部門の強化へと結び付け、その結果として、企業体質が断然強くなるという論調も面白い。


ただ、これは言うは易く、行うは堅しで、日々の業務を運営するシステムができ上がってしまっている企業に対して、それを変革させていくのは、実際問題として、かなりの難易度をともなうだろうし、成功例も少ないだのではないだろうか。

組織の構成員にしてみれば、変革運動は、総論では賛成でも、いざ、わが身に降りかかってくるとなれば、保守的にならざるをえないのだから。


切れ味: 可


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2006年06月01日

半藤 一利,、中條 高徳, 他、編著  『勝者の決断』

テーマ:ビジネス書
半藤 一利, 童門 冬二, 成 君憶, 後 正武, 松岡 正剛, 中條 高徳, 矢澤 元
勝者の決断

『勝者の決断』に所収されている論文は、どれも、ダイヤモンド社から発行している『ハーバード・ビジネス・レビュー』の各号に掲載されたもので、主に、歴史上の出来事や人物を素材にして、戦略思考とリーダーシップ論を述べたものがピックアップされている


したがって、異なる筆者が、章別に、分担する形で、古今東西にわたる広範な歴史的な出来事(主に戦史)や古典を俎上にして、それらに通底する原理原則なるものを抽出、これを現在のリーダーにも通用するものとして論じている。

ということで、まあ、陳腐極まる構成と内容と言ってしまえなくもない。


また、こうした編著にありがちであるが、紙幅の制約もあって、どれも中途半端で終わってしまっている。

ちょこちょこと前菜を食わされた後、肝心なメインディッシュのおあずけをくらった感がある。


かつ、筆者によって、内容の出来にかなりの落差があるのも、よくない。

特に誰とは言わないが、独自の史観も何もなく、ただ、その時に話題になりそうな題材や人物を、節操もなく取り上げ、安直な歴史本を量産している書き手が跋扈している現状は、なんとも嘆かわしい。

これは、読み手の読解力の低下とも密接に関連しているだけに、結構、問題の根は深いのかもしれない。

いずれにしても、このような取るに足りない書き手を、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に載せるのが、そもそも間違いなのである。

他に、もっと識見を持った書き手がいるだろうし、発掘するべきであろう。

編集部は、もっと誠実に仕事に取り組め!


切れ味: 不可


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クラウゼヴィッツの戦略思考―『戦争論』に学ぶリーダーシップと決断の本質

菅野 寛

経営者になる 経営者を育てる

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2006年04月24日

菅野 寛 『 経営者になる 経営者を育てる』

テーマ:ビジネス書
菅野 寛
経営者になる 経営者を育てる

――本書は、「いかにして優秀な経営者になるか」あるいは「どのようにして優秀な経営者を育てるか」をテーマにした本である。


という、『経営者になる 経営者を育てる』のまえがきにあるように、リーダーシップ論なのであるが、従来のものとは、多少とも一線を画したユニークな構成になっている。


プロフェッショナルという言葉に値する経営者が必要とする能力(スキル)には、科学系スキルとアート系スキルの二つがあると定義する。

科学系スキルとは、マネジメントの知識力と、ロジカルシンキングのことを指している。言語や思考を司る左脳をフル活用したスキルである。

これらに関するビジネス書は、巷にあふれかえっている。


一方、アート系スキルとは、感性や閃きを司る右脳を活用したスキルで、次の五つがある。

①強烈な意志

②勇気

③インサイト

④しつこさ

⑤ソフトな統率力

本書は、これらアート系スキルの詳細な説明と、実際にどうやって、これらのスキルを獲得していけばよいのかを、有名な経営者たちのインタビューなども交えながら、展開していく。

別に経営者ではなくても、これらのスキルセットは、あるにこしたことはないので、リーダーシップに興味と関心のある方にはお勧めである。


ただ、ここで書かれているようなことを実践したとして、果たして、意欲はあっても、先天的な能力に欠けている人の場合、どれほど会得できるかは、なんとも言い難い。




切れ味: 可


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クラウゼヴィッツの戦略思考―『戦争論』に学ぶリーダーシップと決断の本質

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2006年04月16日

ボストンコンサルティンググループ  『クラウゼヴィッツの戦略思考』

テーマ:ビジネス書
ティーハ・フォン ギーツィー, クリストファー バスフォード, ボルコ・フォン アーティンガー, Tiha Von Ghyczy, Christopher Bassford, Bolko von Oetinger, ボストンコンサルティンググループ, BCG=
クラウゼヴィッツの戦略思考―『戦争論』に学ぶリーダーシップと決断の本質

『クラウゼヴィッツの戦略思考』は、経営コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループが、難解な戦争哲学書として知られる『戦争論』のエッセンスを紹介した本である。


序文に曰く――本書は原文を四分の一に要約したうえ、わかりやすく、論理的な順序に再構成して、読者の方々にクラウゼヴィッツの知見を容易にご理解いただけるようにしたものである。


つまり、現在のビジネス環境にも通用する戦略論、組織論、リーダーシップ論の古典的存在として、『戦争論』の価値をを捉え直し、特に著者であるクラウゼヴィッツの戦争全般を考える上での思考方式に着目している。


再び序文に戻って――日本の読者のみなさんに『戦争論』を読んでいただきたいのは、次の三つの理由からである。

まず、海外から見ると、クラウゼヴィッツが『戦争論』を執筆した時代と、現代の日本のビジネス環境とは、既存の競争秩序が大きく変わる変革期という点で大きな共通点がある。

クラウゼヴィッツによれば、激動、変革の時代には、リーダーは短絡的に早期解決策を探るのではなく、「戦争か平和か」「攻撃か防御か」など、相反する二つの視点を持って弁証法的に熟考する必要がある。論理的に正反対な関係にある二つの視点から考えていくことは、現代でも大変有益である。

最後に、クラウゼヴィッツの視点と、現代日本人との視点との共通性も見逃せない。『戦争論』は敗者から見た自己変革の書である。


現在のビジネスシーンに氾濫している言葉に「戦略思考」なるものがある。

大抵の場合、何となく知的な響きがあるからという理由くらいで使っているのに過ぎないのであろうが、「戦略思考」の本来的な意味や、有効に活用するための方法論を知りたいと欲するのならば、その言葉の元祖、クラウゼヴィッツに学ぶに如かず、というわけである。


個人的な感想としては、戦争につきものの摩擦の概念と、それによって生じる不確実性と偶然性の要素を考慮しない戦略策定は致命的であるというのが、興味深かった。

たしかに計画通りにいくことなど、滅多にないのだから。

こうした不確実性や偶然によって、戦争における作戦計画や行動が大きく左右されてしまうことへの耐性を持った者だけが、真のリーダーシップを発揮できるのだ、という指摘も最もなことであると思う。


最後にまた序文から――クラウゼヴィッツの『戦争論』は、激動の時代の優秀なリーダーに求められる「思考の力」を深く洞察した書物である。クラウゼヴィッツ的な考え方は将来に対する可能性の幅を大きく広げてくれるのである。


というわけで、なかなかの好著ではあるのだが、読み通すには、結構、骨が折れる。



切れ味: 良


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2006年04月10日

堺屋太一  『歴史からの発想』

テーマ:ビジネス書
堺屋 太一
歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか

歴史に学ぶ組織論とでもいった類の本。

歴史を題材にした場合、どうしても傑出した天才的指導者にばかり目が向きがちである。

しかしながら、こうした天才は滅多に現われるものではない(だから歴史上に名前を残しているのだが)。

となれば、常人には参考にならない天才に焦点をあてるよりも、組織そのものの変遷に目を向けた方がいい。

とはいっても、組織史の学問は、もっとも立ち遅れている分野である、と著者はいう。

それが、本書執筆の動機の一つにもなっているようだ。


本書のラストで、著者は、「勝てる組織」を創るには、権威と権限の分離という分業体制を構築すること――組織のなかに権威を持つ人間と能力を発揮する人間(つまり権限)を分離しようという考え――が不可欠であると指摘している。

これは面白い指摘であると思うのだが、ほんの数ページしか言及していないため、あまりにも物足りなさ過ぎる。もう少し紙幅を割いて、この分担論について掘り下げてくれれば良かったのに。


組織におけるナンバーツーの立場にある女房役の役割に関する記述もなかなか面白い。

こちらには、十分な紙幅が割かれている。

著者によれば、女房役は、あくまでナンバーツーに徹しなければならず、何があっても、トップに取って代わることはなく、それを自他ともに認める人でなければ、女房役は務まらないという。


ことのついでに言えば、女房役には、トップが暴走した場合、そのブレーキ役になることが求められると思うのだが、ライブドア事件では、女房役が、トップと一緒になってアクセルを踏み続けてしまったようである。



切れ味: 可


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2006年03月27日

ガブリエル ストリッカー  『取締役会の毛沢東』

テーマ:ビジネス書
ガブリエル ストリッカー, Gabriel Stricker, 鈴木 尚子
取締役会の毛沢東―毛沢東の「ゲリラ戦論」に学ぶマーケティング戦略

アマゾンの読者レビューで評価が良かったのと、ユニークな題名に期待して購入。

が、昨今、読んだ本の中でも最低のものだった。


毛沢東の提唱したゲリラ戦の戦略論を現代のビジネスに応用しようというアイデアは買う。

が、中身があまりにもお粗末すぎる。

ゲリラ的商法で成功したビジネスの事例紹介の内容の貧弱さは言語を絶するものがある。

こんな無内容なものをわざわざ翻訳したあげく、本にして売るな!


経営コンサルタントと称する著者の経歴も怪しげであり、ビジネス書をパロディタッチに仕上げようとした遊び感覚もくだらなさすぎる。

とにかく買って損した。



切れ味: 不可


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2006年03月20日

田坂広志  『使える弁証法』

テーマ:ビジネス書
田坂 広志
使える 弁証法

昨今、ビジネスマンの最強思考ツールとして、ロジカル・シンキングをテーマにした本が、大量に出回っている。

あたかも、この論理的思考能力を身に付ければ、あらゆる問題が解決される万能薬、とでもいうかのような煽りにつられて、飛びつくビジネスマンは多いことだろうが、果たして、その中で、どの位の割合で、実際に論理思考力を身に付けた人がいるのだろうか。

そもそも、こういうブームに批判的な目も向けずに飛びついてしまうメンタリティそのものに問題があるようにも思えるのだが……。


本書もその類のものなのであるが、さすがにロジカル・シンキングでは出遅れになるので、「弁証法」を持ち出してきている。

この世の中には、「弁証法」の法則が働いている。

で、この「弁証法」の法則を知り、現実の問題に適用して考えていけば、あらゆる問題の本質、未来が読めるようになるという。

「弁証法」の法則は、万能薬だと強調している点は、ロジカル・シンキングの売り込みと変わることはない。

まあ、思考ツールの一つとして知っておけば、あるいは何かアイデアに詰まった折にでも、役に立つことがあるかもしれないが。

それにしても、文章の少なさといい、行間の広さといい、質量ともにスカスカの本だという感は否めない。


切れ味: 不可

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2006年02月06日

野口悠紀雄  『ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル』

テーマ:ビジネス書
野口 悠紀雄
ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル


アメリカ西海岸にあるカリフォルニア州は、世紀を越えて、二つのゴールドラッシュを経験している。

まず最初は、十九世紀、この地で金が発見されたことによるものだ。

それまで、あまり人が住み着いておらず、自然にさらされるままであったこの地が、金の発見により、輝かしいフロンティアに一変した。

このフロンティアを目指した多数の野心家の中から、ほんの一握りだが、巨万の富を築いた者たちが現れたのである。


もう一つのゴールドラッシュとは、ITによってもたらされたもので、二十世紀末から現在も進行している。

これは、主にITの主流をなしているトップカンパニーの多くが、この地から誕生していること、もっと言えば、スタンフォード大学の学生達の手によって起業されているケースが多いことを指している。

例えば、ヤフー、グーグル、シスコシステムズ、サンマイクロシステムズ、ネットスケープ、ヒューレットパッカード等々である。

当然のごとく、こうしたベンチャーから株式公開を果たした起業家たちは、莫大な富と名声を手に入れた。

創業者だけでなく、ストックオプションを持っている従業員たちの間にも、かなりの報酬を得た者が結構いたりする。


その二つのゴールドラッシュの策源地が、いずれもカリフォルニア州であるというのは単なる偶然ではなく、共通した理由が存在するのではないか。

つまり、この地に、富を生み出すための何らかの社会的要因が働いているのではないか――だとすれば、その要因、あるいは環境や条件とは何なのか?

また、この地に集まった大勢の競争者の中で、成功したごく一握りの人や会社は、どうして競争に勝つことができたのか? 

それらを探ることが、本書の主題である。

更に言えば、このゴールドラッシュを反射鏡にして、今の日本に足りないものは何かについて言及している。


あくまでアメリカ的な優勝劣敗型の自由競争を説いてやまない著者の主張には、賛否両論あるだろう。

ただ、そうした著者の自論を肯定するか否かは別にしても、十九世紀のゴールドラッシュにまつわる数々のエピソードは、なかなか面白い。

また、それと、現在、この地でのITの活況を、スタンフォード大学を媒介にして結びつけていく展開もスムーズで違和感は、それほど感じられない。

アメリカ文化の一つの側面を知るうえで、読んで損はない。



切れ味: 可



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2006年01月06日

ピーター・ドラッカー 『プロフェッショナルの条件』

テーマ:ビジネス書
P・F. ドラッカー, Peter F. Drucker, 上田 惇生
プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか

本書は、過去にドラッカーが発表した論文のうち、特に自己啓発に関連するものを選んで、編集されてある


ドラッカーの著作は、文章が簡潔かつ明瞭で大変読み易い。

一つには、翻訳が優れているせいもあるのだろう。

とにかく、何を言わんとしているのかが、明確に理解できるということがいい。

逆に言えば、何を言っているのか、さっぱり分からない本や、中身のないものを、さらに水で薄めたようなスカスカのビジネス本がいかに横行しているかということだ。


さて、ドラッカーであるが、もう一つの魅力は、この手の本にありがちな、人は誰でも潜在的には無限の能力をもっているのだからと、一種のスーパーマン願望を煽るような無責任な言動が、一切見られない点だ。

人は、ごく一部の天才を除けば、能力に大差はなく、伸ばせる能力にも限度があるとし、その上で、では如何にして、人間社会の九十九パーセントを構成する我々凡人が、限られた能力を活かして、意義ある人生を歩むことができるのかを説いている。


「夢はかなえる」式の無責任に成功を煽り立てる馬鹿な啓発本を十冊よりも、ドラッカーのこの一冊を熟読したほうが、余程ためになると思うのだが。


最後に、本書の中で気に入ったエピソードを引用しておきたい。


――私が十三歳のとき、宗教のすばらしい先生がいた。教室の中を歩きながら、「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。先生は笑いながらこう言った。「今答えられるとは思わない。でも、五十歳になっても答えられなければ、人生を無駄にしたことになるよ」



切れ味: 可


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2005年11月01日

三枝 匡  『戦略プロフェッショナル』

テーマ:ビジネス書
三枝 匡
戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ

元の単行本の初版が出版されてから十四年経っているが、文庫本も含めて増刷が重ねられている。

ライフサイクルの短いビジネス書としては、稀に見る息の長さといえる。


著者は、経営コンサルティングや、企業再生の請負人として、第一線で活躍してきた経験豊富なプロの経営者である。

たしか、現在は、ミスミグループのCEOを務めていると思う。


本書は、米国企業に較べて、戦略性が欠けている日本企業のマネジメント層に、戦略思考の重要性を認識させ、戦略策定に有効な様々なツールを知らしめた点や、抽象的な経営本とは一線を画したドラマ仕立てのケーススタディという工夫を凝らしている点など、はるか昔のビジネス書として片付けてしまうには、惜しすぎる。


ドラマ仕立てにした点について、著者は、次のように書いている。


――このケース(本書で取り上げている事例)は、アメリカのビジネススクールの教材になっているケースとか、学者の書いた経営戦略書のケースとは、だいぶ趣を異にしている。

私は、常々、これまでのケースには不満を持っていた。

どれも、かなりマクロ的に書いてあるために、経営者個人の苦悩が浮かび上がってこないか、もしくは教材として必要最低限のことしか書いてないために無味乾燥か、どちらかの場合がほとんどだ。

単行本やマスコミに載る企業モノの読み物は、後付けで、経営者を褒めそやすものが多く、途中のリスクを理論的に解析したものは少ない。

そんなことが動機で、このケースが書かれたのである。


実際にあったケースに脚色を加えて書かれたストーリーは、臨場感があるし、説得力も十分だ。

三枝と同様、ビジネス戦略ストーリーでヒットした『なぜ会社は変われないのか』の著者、柴田昌治が、会社組織の風土・文化に風穴をあけるためのソフト改革を重視したのに対し、三枝の場合は、まず戦略ありきのハード改革によって、組織全体に揺さぶりをかけようとしている。

最終的な目的、ないしは目標は同じであっても、そこに到達するための手段、方法は異なっている点で、両者の著書を比較しながら読んでみるのも面白い。



切れ味: 良


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