風の子供が 山へ出て

釣鐘草をふきました

釣鐘草は眼をさまし

ちんから ころりと 鳴り出すと

薄も桔梗も刈萱も

みんな夢からさめました。

 

風の子供が 浜へ出て

やどかりの顔なでました

やどかり びっくり 戸をしめて

よんでも よんでも 出てはこず

さんまも 鯛も えびの子も

波にかくれてゆきました。

 

 

  詩の意味と考察

1連

風の子供が山へ行って、眠っているつりがね草をふーって吹くと、つりがね草が目を覚ましました。

そして 「ちんから ころり」 と鳴りだすと、眠っていた秋の草花たちがみんな目を覚まして、山は秋になりました。

 

2連

浜に行って、遊んでたヤドカリをなでるとヤドカリさんびっくりしてあわてて顔を隠して、それっきり出てこなくなっちゃいました。

お魚たちもみーんな波にかくれて行って、浜辺は静かになりました。

 

 

つりがねそうが眠っていた秋の花たちを起こして、秋草たちがみんな咲いてにぎやかな秋になったという発想。

浜辺ではいろんなお魚やヤドカリさんたちが遊んでいたのに、秋だよ、って風さんに言われてみんなおうちに帰って行っちゃうという発想。

山はにぎやかな秋に、浜は静かなさびしい秋に。

さすが絵描きの書いた詩で、なんて可愛い発想でしょう。

 

 

  曲の考察

メロディーもまた可愛くてさすが中田喜直の作曲。

情景を表現するのがとても上手い作曲家です。

この歌は単独でもよく歌われますけど、本当は 『六つの子供の歌』 という組曲の3番目の歌です。

 

1 うばぐるま     (西條八十 詩)

2 烏                 (小川未明 詩)

3 風の子供        (竹久夢二 詩)

4 たぁんき ぽーんき(山村暮鳥 詩)

5 ねむの木       (野口雨情 詩)

6 おやすみ       (三木露風 詩)

 

 

  中田先生の言葉

歌い始めの 「かーぜのこどもがやまへでて」 のところ、「ぜ」と「の」にスタッカート(切って歌う)が付いていて、その上にスラー(なめらかに歌う)がかかっています。切って、なめらかに、って正反対ですよね。

メゾスタッカート、と言うのですが、なかなか難しい歌い方です。

そのあとにも所々にメゾスタッカートがつけられています。

 

「あのね、風のこどもがね...、と目の前に居る子供たちにお喋りするように少し切って歌うこと。だからスタッカートにスラーがついているんだよ」

とおっしゃっていました。

 

要するに、歌い上げるのではなくて、目の前の子にゆっくり楽しくお話をしてあげているようなつもりで歌うといいのだそうです。

 

 

やっぱり歌曲ってすてき!

の。