三次創作小話「忘羨(ワンシェン)その後」第四十七章⑨



(元温家領、外れにて)

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弟は、鴉(カラス)が大群で飛んで行く姿を、ぼうっと見ていた。

すると、きらりと光る細長い棒が見える。

「兄ちゃん、あれ、何?」


兄は「仙師様だ、仙師様が飛んでる」

兄弟二人は、頭上を飛んで行く、剣に乗った白い衣の男を必死で追いかけた。


とうとう見失い、あきらめかけた時、大岩の上に寝転ぶ白い衣を見つけた。

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いざ村へ帰ろうするが、帰り道が分からない。

「では、不夜天の方向へ戻ってみようか」


三人は歩き出すが、すぐに弟が疲れてもう歩けないと泣き出した。

小さな兄が、もっと小さな弟をおんぶしようとしている。


暁チェンは、そんな兄を背負うと、弟を抱っこして、剣に飛び乗った。


「しっかりつかまって。

下をよく見てるんだぞ。

きっと、村への道標が見えるはずだ」


じきに兄が前方を指さして、

「あの大きな木、お社(やしろ)の木だ!」


日暮れが近い。

大人たちが、慌し(あわただし)く走り回っている。


「ゴン爺」と呼ぶ声に振り向いて、

「お前たち、無事だったか」

二人を抱きしめて、

「皆で捜していたんだぞ。どこへ行っていた?」


「仙師様を見つけたよ」

弟が指さす方を、村人が一斉に注目した。

暁チェンは丁寧に拱手した。


その夜、村の窮状を詳しく聞いた暁チェン。


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鬼と言っても、本物の鬼ではありません。

やつらは、人間です。

恐ろしい形相の鬼面を着けているだけです。


この一帯の村々は、昔から銀鉱脈のおかげで生計を立てていました。

温家が滅亡するまでは、温家の勢力で外敵から守られていました。


もちろん、その代償として、利益の何割かを貢いでいました。

宗主が代わる度、その割合が増えていきました。


その当時は、温家宗主を恨んでいました。

温家の領土でさえなければ、これほど困窮することはなかった。


六十年前、温氏が壊滅し、生き地獄から解放され、人並みの生活に喜んだのは、ほんの二年余り。


鬼面の賊が現れ、我々から何もかも奪い取り、我々は奴隷のごとく働かされてきました。

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つづく







この動画、観たことがあります。

会話の内容がやっと分かりましたウインク


https://x.com/ybaizhan/status/1742222962923868369?s=46&t=BKI2Vjbw7xegQeZ79lADgw