【再掲】続 お宿の七不思議Ⅸ 「何故温かいものが温かく出されないの?」 | 旅館・リゾートホテル応援団 伊豆・箱根・熱海 他全国の温泉地、里山活性化を考えます

【再掲】続 お宿の七不思議Ⅸ 「何故温かいものが温かく出されないの?」

 昨日は、サービスのシステム面から料理出しの一面をご覧いただきました。

今日は、スタッフ側&料理場サイドからレポートさせて頂きます(笑


 そうだビックリマーク

その前に、ひとつ大事なお断りを。

現段階で、日本全国には約53,000件の旅館があるといわれています。(減少傾向)

ホテルは約9,000件ほどございます(増加傾向)

そこで働くサービススタッフは何十万人いるのでしょうか?わかりませんが、このレポートは、少なくとも「温かい料理をお客様にお出ししたいと」思わないスタッフは誰一人いない!という生善説で書いております。


 昨日のレポートでは、サービスのシステム上、宿泊料金に比例して接客も質を向上できると書かせて頂きました。

 では高級旅館では、必ず温かいものは温かくでるのか?1年365日必ず出来ているのか?

旅館形態でも約53,000軒あるのですから、私も正確な事は判りません。

 ただ、限りなく不可能に近い事である事は推察します(勿論365日正確にお出しできているお宿さんもあるとは思いますが・・)


 その理由は・・・


 お部屋食より比較的料理進行が把握し易い、レストラン形式でご説明します。


ここは全席20席のリゾートホテルのレストラン。

今日は18:00 18組、20:00 13組のお客様が予約されている、ごく普通の平日です。

私は年齢層の違う、それぞれカップルのゲストを前半(18:00)スタート3席受け持っています。

本日のメニューは


アミューズ(軽い前菜)→前菜→スープ→魚料理→グラニテ(氷菓子)→肉料理→サラダ→チーズ→デザート


宿泊料金が¥28,000ですから、比較的しっかりしたコースメニューです。


 今日のメニューでは魚・肉のメイン料理が温かいお料理です。スープは冷製スープとの事。

通常、オープン前に料理法や素材、調理にかかる時間などを確認します。

又20:00スタートのお客様が13組いらっしゃるので、前半の未使用テーブル2卓を使っても残り11組の卓を19:45までにお帰りいただかなくてはなりません。少し気合が必要です。

今日は魚料理が5分、肉料理が7分との事でした。


 1卓のゲストが時間通りお見えになりました。

ドリンクはワインのフルボトルのオーダーです。

ドリンクオーダーを受けた後まずはアミューズをお持ちします。

おっと、ワインも続けてお持ちします。

 入口に3卓のゲストが・・・

やばい!ワインはヘルプに頼もう!

アミューズはポーションが少量ですので、すぐ前菜をオーダーします。


前菜オーダー後3卓のゲストが着席されました。

 すぐご挨拶、ドリンクーメニューをお持ちします。

(1卓のお客様がアミューズ食べ終わりました)

ドリンクを決めていただいている間、1卓の前菜をお持ちします。

あっ、2卓にお客様が・・・


だいたい、こんな感じでサーブ(配膳)にはいりますね。

 サービスマンはデシャップ(調理をお願いする指示、またはその紙)を調理場に通して、次の料理を待つ訳ですが、形態により、自分で通す場合と浮いた存在で専門に通すデシャパーがいる場合に分かれます。勿論デシャッパーがいた方が、よりサーブに集中できるのは言うまでもありません。

 またヘルプと呼ばれる、卓持ち(サーバー)以外に浮いた存在で全体のフォローに回る人間も必要です。

概ねマネージャー、サブクラスが担当しますが、場所によりサーブをまかせれない新人クラスをあてがうところもあります。

 

 一番最後に席に着いた2卓のお客様にスープを出し、順番では一番最初に席に着いた1卓のゲストの魚料理のハズですが・・・・先程からスープに手をつけずお話に夢中です。

 1卓は今少し、様子を見ましょう。

この時点で18:30。1卓のゲストをはじめ今日は全体的にアルコールの出が良く、レストラン全体がスロー進行です。

 残り時間は75分。少し汗が・・・・


2卓のゲストがスープスプーンをとり、スープをお飲みになり始めました。

今日の魚料理は、焼き上がりに5分位かかるとの事。

よしオーダーしよう。デシャッパーを探しますがいません。

??

あっ、ドリンクをサポートしている・・

しょうがない、自分で頼むか。と調理場へ

んっ・・・

魚料理のデシャップがぞろぞろと・・・

渋滞です!料理進行が全テーブル見事にシンクロしているようです。

やば、5分じゃ出てこないな。


 このように、お客様の進行状況が目に見えても、調理場が1ヶ所の場合、料理が渋滞する事は良くあります。

例に挙げた魚料理はまだ中盤ですから、本来調理場もある程度オーダーが重なっても他のスタッフが集中している魚料理にヘルプができます。

 但し、後半のお肉料理で渋滞が起こった場合、進行が早い卓はサラダ、デザートに入っていますし、遅い卓はまだ魚料理という場合もありますので、調理場もお肉料理にあまり加勢できません。

 勿論サービススタッフは、調理場の状況を見て、ホールで間つなぎをしますが、得てしてこのようなときは料理が一遍にでてきます。

 勿論、殆どの場合、ヘルプの人間もフル稼働して、温かいままお出ししますが、ここでイレギュラーなオーダーやゲストの会話で時間を取られる、ワインのオーダーが重なるなどの自体が重なると・・・・

 たまにお肉が冷めてしまう事も・・・・・・・・・・・・ございます。


 特にここ数年は、宿泊ピークにスタッフ数を合わせるとコスト面が厳しいとの事から、60%~70%の客室稼働に通常の適正人員を設定するお宿さんが増え、このような事態が起きた場合には、サーバーのスキルだけでは対処できない場面も増えています。


 レストラン形式では、進行状況が判り易いと申しましたが、もう一点、お部屋食に対してアドバンテージがあります。

それは、殆どの場合ホールに隣接して調理場があります。

お部屋食は各階に水屋(パントリー)と呼ばれる、バックヤードはありますが、調理場とは距離があるのが普通です。

 先程レストランで起こった、全体進行のシンクロがお部屋食で起きた場合は、より悲惨な状況になる事は御想像いただけるかと思います。

 勿論我々スタッフ始め経営者も、このような場面を想定し、対策は練っております。

但し、コストと設備面での制約がある以上、この課題をクリアーすることは並大抵ではありません。

 極論すれば、スキルの高い一人のサービススタッフや仲居さんがいなくなるだけで、全体の接客バランスが崩れるほど、ぎりぎりのタイミングで日々接客にあたっております。


 如何でしょうか?

温かいお料理を、温かくご提供できない場合がある事を、多少ご理解いただけましたでしょうか?

そうであれば、真摯にサーブしているサービススタッフも少しは報われるかもしれません。


最後に一言だけ。

そうは言っても、我々サービススタッフは、いかなる理由があろうとも、常にピンポイントの最適なタイミングを狙ってサービスしています。

ですから、全部のお客様が笑顔でお帰りになられた時、

「やっぱりサービスって楽しいよね!」

という充実感に変わるのです。


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