放射線治療が始まって間もない頃、リニアック室に入るといつも
「おはようございます」
と声を掛けてくださる男性の方がいらっしゃいました。
治療時間が近く、リニアック室やロビーで毎日顔を合わせる度に互いに挨拶する様に。
しかし母の治療7回目頃、男性は治療が終わったらしく、お姿を見かけなくなりました。
お互い名前も、どんな癌と闘っているのかも分からないままでしたが、
「おはようございます」
この声掛けだけで、私も母もどこか治療室に行くのが楽しく、救われていた事に気付きました。
挨拶だけですが、毎日顔を合わせるからこそ、
どこか心の中で、
「お互い、今日も頑張りましょうね」
と、声を掛け合っていた様な気がしていました。
この男性から引き継いだ挨拶を、母と話し合って今度は私達から他の方へ繋げていこう。
そう決めていました。
最初は挨拶をしても、
返してくれる方は少なく、
頭を下げるだけの方も、
気付かず通り過ぎる方も。
確かに同じリニアック室とはいえ、突然知らない人に挨拶されたら、驚いたり返さなくても当然です。
しかし、母と毎日続けてきました。
次第に、お互いに挨拶する方が増えて、
「お疲れ様〜!お先に」
「この前はカルテ、気付いてくれてありがとう」(カルテの置き忘れに気付き、声を掛けた事がありました)
と、声を掛けてくださる方まで‥。
あの男性から引き継いだ挨拶が、ここまで広げることが出来ました。
間もなく治療が終わってしまい、顔を合わせる事が出来なくなります。
母と寂しいねと、治療後に語っていました。
あと3回で治療が終わります。