本誌より少し前の物語(本誌沿い)
「今日の敦賀くん、隙だらけだな。」
キスを許していた蓮を貴島はからかう。
「京子ちゃん、紅葉決まったよ。うちの女
優が千鳥だ。お祝いに行ってきなよ。」
「ありがとう。千鳥、琴南さんじゃない
のか。」
「琴南さん、千鳥役にはちょっと背が高
いよね。最終オーディションに参加した
うちの事務所の子の話では紅葉役は全員
琴南さんより背が低かったと言ってい
た。千鳥は小柄な設定だからうちの子た
ちは知名度が一番高くても琴南さんは
当初から無理と思ってたらしい。」
「そうか。原作がコミックだからそうな
るか。」
「コミックの志津摩はもろ敦賀くんだ
ね。古賀くん、どう演じるか見ものだ
なあ。彼、よく引き受けたよね。」
「森住監督と懇意だからね。」
「おっと、無駄話はおしまい。早くいっ
てきなよ。京子ちゃんにキスで消毒して
さっきのはチャラ。俺も忘れた。」
「ありがとう、貴島くん。」
嬉しそうに立ち去る蓮に貴島はジェラ
シーを感じた。
(…俺も京子ちゃんを本気で好きなんだけ
どな。)
End
2018.7.9初稿
2019.6.15加筆修正