「つ、敦賀くん！よ…よく会うね。」
こんな偶然あるはずない！
なんなのよと思いつつ、坊に扮したキョー
コは軽快に挨拶した。
「ホントに恋人に会いに来る気分だ。」
蓮は口調は明るいが、どこかそわそわ
していた。
「どうしたの？敦賀くん。もしかして
僕に用事？」
「ん、恋愛相談かな。」
蓮の言葉にキョーコは胸がズキッと
痛んだ。
「どんなこと？」
「昨日、俺が想ってる子が撮影見に来た
んだけどコメントなくてうまく出来てい
たか自信なくて…。」
「！！」
昨日、森住さん来てたの？！
遭遇しなくてよかった！！
「君らしくもないな。かっこよく撮れ
てるに決まってるじゃないか。」
「カラコンつけてて変じゃなかったか
なと思って。」
じっと蓮に見つめられてドキッと
するキョーコ。坊でよかったとつくづ
く思う。
「君が変な訳ないじゃないか。カラコ
ン着けたら日本人には見えないかも知
れないね。」
「そうか。君が変じゃないと言ってく
れて安心したよ。」
「それはよかった…。」
「そうだ！君、彼女は？」
「いないけど……。」
「よかった。丁度いい人いるんだ。」
「？」
「ほら、前に話した後輩の京子さ
ん。可愛くて料理の上手な…。」
「！！」
「君にぴったりだと思うんだ。俺が彼
女を連れてきて紹介するよ。」
「僕、そんな知らない子とあうの
嫌だよ。勝手に決めるなよ。」
「将来有望な女優さんだよ。君に損は
ないよ。」
「嫌だって言ってるだろ！」
「そう言わずにもう日取り決めてるん
だ。びしっと決めてくれよ。」
蓮は招待状を渡し、去っていく。
「ちょっと、敦賀くん！」
キョーコは叫んだが、蓮は行って
しまった。
手には招待状。中を開けてみる。
日時は12月25日午後8時。
場所は日比谷の有名ホテルの
メインダイニング。
(…すごい！X'masにフルコースディ
ナーだ。これが敦賀さんとだったら
…。あ、あ…グレイトフルパーティで
誕生日を祝ってもらってたげど、邪魔
だからもう参加するなってことかな。
プレゼント楽しみにしてたのに…。)
キョーコはその場に崩れ落ちた。