「今、4バンドだって。シーナんとこが届出したばっかり」
「出よ?やろうよ、みんな!」
自分の必死さに、笑えてくる。
「まだ通しで出来る曲、1曲しかないよ?」
とニコニコ笑いながらカオリンが。
「マユが出たいなら、アタシがんばっちゃう」
と由依。
チラッとアヤをみたら、
「任して。私、何でも歌えるから」
とウインク。ウインク上手く出来るのって、いいな。なんか、上級者。色んな意味で。ウチは絶対両目つむるか、口が開いちゃう。
「じゃあ、アヤ、お願い。ヨッチャンにエントリーの連絡入れといて?」
「オッケー!あとで申請の紙、出しとく」
みんなで、ライブするんだ。
なんだかわくわくする。忙しくなるなぁ。
☆ライバル☆
あれから、偶然を装って2回、シーナくんと一緒に登校できた。昔、猫を飼っていたこと、小学生の妹さんがいること、自分のことをいつも気軽に話してくれて、ウチにとっては夢のように大切な時間。
でも、最初に一緒に行けた日にウチを睨んできた二人も、時々彼を待伏せしていて、タッチの差で負けてしまったり。
あぁ、モテるひとの彼女って、こんなにいつもヤキモキしないといけないんかな?病む。病むよ、コレ。
もう少しシーナくんがシャイだったり、取っ付きにくかったらいいのに。なんせ、間口が広すぎる。ウェルカム過ぎて、モヤモヤする。
今までのカレシは、私がいても常にもっといい物件はないかってキョロキョロしているようなところがあった。
向こうが不誠実なぶん、男子なんてそんなものかと思って、何か変な痕跡をみつけても、ガッカリはしたけどヤキモチを焼くほどではなかった、今までは。
私、彼らのことを、本当に好きではなかったんだ。
だってそう、女子に挟まれて歩く彼の、ふわふわの髪と広い肩幅を見るだけで、こんなにも胸が苦しくて、ザワザワする。
お願い、シーナくん。
そんなかわいい笑顔を、他の女の子に向けないで。