道路に出て最初の角を曲がるタイミングで、さりげなく車道側に入れ替わってくれた。こういうのって、地味に嬉しい。
「シーナくんてさ、いつもニコニコしてるよね、私へこむとすぐ顔に出るから、羨ましい」
「そう?元々そういう顔なんじゃないかな。ニヤけてんじゃねぇ!なんて絡まれたことあるし」
「えっ!危ない」
「あっ、でも真顔になるときあるよ。演奏してるときとか、トイレのとき。集中しないとね」
「トイレ?」
「ニコニコしてウンコしてたらヤバイ奴だろ?そんときゃ真顔」
そんな綺麗な顔してウンコって!
ヤバい、ツボった。あははははは、笑いがとまんないウチを、嬉しそうに見てる。最初はガチガチだったけど、いつのまにかすごくリラックスして楽しくなってきた。
大通りを抜け、住宅街に入り、お互いの声がよく聞こえるようになった。
「バッグ、それいつも持ってるね」
「あっ、コレ?」
酷使して少しくたびれてきてて、恥ずかしいウチはサッと隠した。
「見してよ」
「やっ、見せるほどのもんじゃ」
「ねこ。真ん中の黒猫が、イカしてる」
「イカ?」
時々きいたことない言い回しをするなぁ。
「あっ、ごめん。すごいイケてるってこと。体ちっちゃいのにヤケに鋭い眼光」
「もっとかわいくしたかったんだけど、なんせ技術がおっつかなくて」
「手作り?すげぇ。猫、すき?」
「ウン。うちの猫がモデルなの」
「俺も、猫好き。今、いないけど」
色々訊いてくれて、ニャームとの出逢いから今までのヤンチャエピソード等、嬉しくなって夢中でいっぱい話してしまった。女の子の友達にもこんなに話したことないのに。
これが噂の、人たらし?
話題を変えなきゃ!