「お前に頼まれると、弱い」
惚れた弱味。
「けど、」
「頼む」
シナユーの香り、滑らかな肌の感触。
闇の中、五感が益々冴え渡る。
「わかった」
ホッとして、微笑んでくれた気がした。見えないけど。
「オレの頼みも聞いて」
「もち、いいよ」
「今度、お前の絵、描かせて。スケッチでいいから」
「そんなん、いつでも」
「もうひとつ」
「何?」
「キス、させて」
「オイ」
「ダメ?」
「俺、サワともまだキスしてないのに」
「一回だけ」
「…」
「最初で最後」
「んー」
「一生のお願い!墓場まで持っていくから。ん、これ、使い方合ってる?国語、ニガテ」
「合ってるよ、バカ」
くっくっくっくっ。
ツボッた?笑いがなかなか止まらないシナユー。
「佑には…、負ける」
「負けてくれんのか?」
「また、マジで来られたら困る。俺の貞操の危機」
「確かに」
「いいか?これはアホなDKの俺たちが、彼女とのキスに備えての基礎練習だ」
「なんか部活っぽいな(笑)」
「本番でトチらないための、予行演習!」
「罪悪感、だいぶ減るな」
「佑が女子な?ジッとして、手は使うんじゃねーぞ」
「ハイハイ」
シナユーとキスできるなら、設定なんてなんでもいい。
「うまく出来るかな、中学以来だ」
嘘だろ?ずっとモテモテのくせに。