ニューヨーク市内の交通は地下鉄、バス、タクシーにウーバーが主力となります。
自家用車を持ってもガレージ代は高いし、道は混むし、駐車料金は高いし…
さて、コロナ禍になり、私は地下鉄よりバス利用の方が多くなりました。窓から風が入り空気の循環がまだしも良いような気がします。
地下鉄駅でホームから突き落とされる事件が多発してからは、ますますバス派になりました。
乗ってみると時間はかかるものの、外を眺めればプチ観光、中を見回せば人間模様のプチドラマ… なかなか楽しいものです。
先日乗ったバスでは次々とプチ事件が起き、降りるまで楽しかったり、気を揉んだり…
事件1
「あらまぁ!そんなところに携帯電話の電源があったの⁈」
ハンサムさんが立ち上がって天井のジャックに携帯電話の充電端末を差し込んだところでした。
「そうなんですよ、ここにあるんです。」
「まぁ!あなた知っていた?」
周りには白人、黒人、ラテン系とおばあちゃまがいく人も座っていて、みんな「ホント!知らなかったわ〜」とちょっとした井戸端会議。ハンサムさんも一人一人に丁寧に返事をしている。
事件2
次の停留所でハンサムさんが降り、青信号で発車しようとすると女性がドアを叩きました。
運転手さんは開けて乗せる体制。この人親切だわ、この前私は無視されたもの…
女性は大きなベビーカーを乗せようとしました。
「ベビーカーはそのまま乗せられませんよ。」
「あらそんな事ないわよ、いつも乗せてもらってるもの。」
「いや、ダメです。」
運転手さんが簡単には席から出て来られないのを良い事にサッサと乗り込んでしまいました。
運転手さんを守る為に席は厳重に囲ってあるんです。
ちなみに車椅子は乗れて、入口も通路もゆったりと確保されています。
そういえばつい先日、ベビーカーごとバスに乗せてほしいとの陳情を新聞で読みました。エスカレーターなど殆ど付いていない地下鉄には乗れず、ほかに交通手段が無いと言うことです。
「あなたここにいらっしゃい。」おばあちゃまの一人が席を立って広い場所を確保してくれます。
いきさつが良くわかっていないらしく、乗るスペースが無いと思い込んでいるようです。
お母さんとおばあちゃまたちは早速おしゃべりに夢中。
ところが信号が何度青になってもバスはドアを開けたまま発車しません。
ははーん、と勘づいた乗客もいて、張り詰めた雰囲気です。気がつかないのはお母さんとおばあちゃまたち。
後ろから紳士が立って運転席に行き、何やら話をして、席に戻りました。
車内アナウンスが入り、「ミス(女性への呼び言葉)、ちょっと運転席まで来てください。」
みんなに促されてやっと気づいたお母さん、運転手さんと何やら話し、「ええ、それならできます。」
戻ってくるとベビーカーから籠を外し、赤ちゃんごとしっかり抱えて座りました。
やれやれ、やっとドアが閉まり、出発。
花が咲き始めた春のセントラル・パークの中を抜けて無事次の停留所へ…
事件3
運転手さん、突然クラクションを鳴らしまくります。
見ると左には沢山の工事車両、右にはベンツが停まっていて進めません。
バンバン鳴らしているのは運転者がそこにいるかららしい。
やがてまたドアが開いた!
怪しからぬ人品の紳士が怒鳴りまくっています。
「みたらわかるだろ!好きでやってるんじゃないんだ!工事車両でいっぱいなんだ!」
そんなこと言ったって、おじさん、あんたの頭の上に「いかなる時も駐停車禁止」って看板が出てるの知ってるでしょ。
運転手さんも何やら怒鳴り返している。
おばあちゃまのひとりがみんなに向かって、「あの運転手さん、凄く良い人なのよ。さっきも私が乗るのに手間取っても凄く優しかったのよ。」「この事であの人が通報されたりしたら私は言うわ、あの人はホントに親切な人なのよ。」
横暴なベンツはやっと脇により、バスは出発。
みんな二日ほど前の地下鉄での銃撃事件が頭をよぎり、ベンツのおじさんが銃でもぶっ放したらどうしようと思ったに違いない。少なくとも私はそう思いました。この位置じゃ直ぐに弾に当たってしまう、どうやって隠れたら良いんだろう…
まったく…
ニューヨークでは映画のように素敵な事も起こるし、映画のように怖い事もホントに起こるから気が抜けない。
その後は何事も無く、あのおばあちゃまが運転手さんの擁護発言を繰り返しするのを聞きながら、バスを後にしました。
いやはや……
