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A子という人間と、私という人間

 

 

[もしかしなくてもB子の旦那とまだ続いてたんやな。ランチとか言うからもう終わってるものやと思ってたわ]

そう送った返信は〔無理やもん〕でした。

 

その直後、携帯の画面にA子からの着信を知らせる表示が…

 

「…はい」

 

出るか出ないか一瞬迷いましたが、ここで無視をしては現状から何も変化はなくて意味がないなと思い電話に出ました。

久しぶりに聞くA子の声は昔と変わらず明るいもので、一瞬なぜか少し胸が切なくなったのを覚えています。

 

『のん、久しぶり』

「…うん。」

『会ったら話そうと思ってたんやけど、私離婚してん』

「聞いた」

『そっか』

「…」

 

完全に受け身で自分から言葉を発しない私と、なんとなく少し無理やりテンションをあげているA子の間に流れる沈黙。

どことなく気まずさがにじみ出ている雰囲気に、ラインではあんなにもゴリゴリなA子だけどやっぱり電話となると人の心が少しは出てくるんだななんて考えつつ

文字ではなく言葉で対面すると少しほだされてしまうのは私も同じで、あれほど嫌悪していたのに嫌味のひとつも言葉にならないまま無言で机の上にあるえんぴつを意味もなく触っていました。

 

『…のんはな、私が嫌い?』

 

少しだけ落ちたトーンでA子が聞いてきました。

 

「…わかんない」

 

嫌い。そう思っていたし、思ってる。でも、なんだろう、そう言えない。

 

わかんないよ。

 

不倫したのは意味が分からないし

それがママ友の旦那なのはもっと意味が分からない。

気持ち悪い

自分勝手

開き直ってるのも、あえて私に言ってきてたのも本当に許せない。

何よりも子どもたちを無いものみたいに扱うのが心底理解できなくて考えると辛くなる。

 

 

なのに、なんで声を聞いて話をしたらこんなにも苦しいんだろう

 

 

なんで、明るくて元気で強気で一緒にいたら楽しかったA子の姿がちらつくんだろう

 

なんで、A子なんて大っ嫌いだと 言葉にできないんだろう


わかんない

 

気が付くと私は泣いていました。

 

 

「わかんない。会いたくない。なんでこうなったの なんでこんなことしたの」

 

ボロボロと出てくる涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔を服で抑えながらA子に問いかけました。

 

『ごめん』

 

電話口の向こうでそうつぶやいたA子の声も震えていました。

 

『ごめん。のん。ごめん』

「ごめんじゃないやん。じゃあやめてよ!全部やめてよ…!」

『でも今Yさんが居なくなったら私何もなくなる!」

「子どもがいてるやん!!!」

 

苦しくて苦しくて、思わず叫んだ声はかすれていました。

 

お互いの嗚咽と鼻水を吸う音だけが続いたあと

『違うねん…のん』

A子がぼそっと震える声で話しだしました。

 

『子どもは母親としての私にとっての存在で、ひとりの人間として、女として私に残ってるのはYさんだけやねんて…』

 

『旦那からはずっと求められてたし好意をむけられていた自覚はあったからな [ママ]じゃない私も認められてる感覚でいてん。Yさんを好きになってYさんに受け入れられて、やっぱり女としての部分は男の人に認めてもらうことでしか成立せえへんなってめっちゃ思ってん。正直、旦那とYさんと二人の男の人から女として必要とされてるのが嬉しかって…』

「…」

『でも、結局旦那は違う女のところに行って…自分でもビビったけどまぁまぁショックやってんな。それが』

「…だから今はYさんに執着してるとでも言いたいん?」

『執着というか…たぶん、うん。そんな感じかな…。やから今すぐには別れられへんねん…』

 

女としての自分

自分という人間

 

母親ではない部分の私も、認められる嬉しさ


それは、そこだけは正直少し分かる部分もありました。[ママとしての私]とは少し違うところにいる[ママではない私]


(私の場合はあくまでママではない私という意味で、女として〜が分かるという意味ではありません。母親ではない私個人という部分で少しだけわかる部分があるという意味です。女として異性に見られたい欲は10年たった今も起きません。笑 コメントで誤解を招いていたようなので追記したおきます。分かりにくくてすいません。)


私が子どもを産んでからアニメや漫画などいわゆるオタク趣味に目覚めた理由も元をたどればそこにあるんだなという自覚はあったからです。

キャラクターにキュンキュンして、ストーリーにわくわくして、イベントに興奮して、そこで出会った人たちと思いを共感することで、私という人間が生きている・受け入れられているという感覚。

人によっては、それがスポーツだったり、仕事だったりさまざまなんだと思いますが、A子にとってはそれが恋愛だったんだと話しを聞いてある意味では納得しました。

 

ただ、何よりも忘れてはいけない事をA子は忘れている。

 

それは、[ママではない私]と[ママとしての私]の優先順位。

子どもをもった以上、そしてその子どもが小さければ小さいほど何よりも優先すべきは子どもで、その存在が健やかに幸せにいてこその自分。

 

そして、常識。

人を好きになるのはある程度は仕方のない事だと思うけど、今の自分とその相手の環境をふまえて、その想いは優先していいものなのかどうか人間として生きる上で当たり前にあるはずの常識力と時に諦めることの大切さ。

 

 

私は電話で、もう言葉なんてめちゃくちゃだったと思うけどそれをA子に懸命に伝えました。

だいぶ前、A子が言っていた「わが子は天使」の言葉を信じて…。

 

 

たぶん1時間は電話をしていたと思います。

 

最後にはお互いに落ち着いて話しが出来ていました。

「もし、私やB子と友達でいる気がすこしでもあるなら、何よりも子どもたちを大切に思うなら、B子の旦那とはもう縁を切ってほしい」

そう伝えた私に

「わかった」

A子はそううなずいて通話は終了しました。

 

 

 

なんとか、なんとか、うまくいい方向にいってくれると、私は半ば祈るような気持ちでいたのですが


それを打ち砕いたのはランチで久しぶりに顔を会わせたB子でした。

 

 

 

 

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