マスター30代/BARのマスター

涼子20代後半/BARの常連


マスター(雨が降りそうなジメッとした天気…なんだか今日は彼女が来る気がするなぁ。)



涼子「カランコロンカラン」

マスター「涼子ちゃん、毎回口で、カランコロン言うのやめなよ。」

涼子「えー?なんかこう言う扉見るとやりたくなりません??」

マスター「わからなくはないけど。」

涼子「あ!マスター…いつもの!」

マスター「いつもの!ってw毎回違うの頼むんだから、いつもも何も無いでしょ?」

涼子「はぁ。マスターは私を全然理解してない!いつもの!は、別になんでもいいんです!適当になんか作ってよ。」

マスター「…はぁ。じゃあ、ダイキリでいいですか?」

涼子「うん!!それ、頂戴!」

マスター「かしこまりました。少しお待ちください……チャーム何になさいますか?」

涼子「今日は何があるの?」

マスター「ピスタチオ…アーモンドチョコ…あとは、ラムベースのお酒だし…きなこ餅とかも合うかもね?」

涼子「え?和菓子とかも合うの?」

マスター「ラムは、サトウキビの廃糖蜜から作られてるから、意外と和菓子も合うんですよ。」

涼子「へー知らなかった!!じゃあきなこ餅で!」

マスター「はい。かしこまりました。」

涼子「ねぇ〜、マスターってさ…イケメンだよね?」

マスター「アハハ!突然どうなさったんですか?」

涼子「いやー、本当にイケメンだなぁって思ったから」

マスター「ありがとうございます……お待たせ致しました。こちら、ダイキリとチャームのきな粉餅です。」

涼子「……っん!?」

マスター「どうでしょうか?」

涼子「うん!合うね!美味しいよこれ!」

マスター「それは良かった。」

涼子「…うん。」

マスター「涼子ちゃん何かあったの?元気ないの?」

涼子「え??…うーん…何も…無いよ?」

マスター「ホントに?」

涼子「ホントだよ??」

マスター「涼子ちゃん…涼子ちゃんが初めてこの店に来た日を覚えてる?」

涼子「覚えてるよ。私が当時の彼氏に振られて、酔い潰れて来た時でしょ?」

マスター「そう。あの時涼子ちゃん雨が降ってるのに傘も持たずにずぶ濡れで、化粧も少し落ちてて…」

涼子「ちょっと、恥ずかしいからそれ以上はやめてよ。」

マスター「涼子ちゃん、あの時と同じ顔してる。」

涼子「え?化粧落ちてる??目元パンダ??ヤダー!」

マスター「違うよw…なんかさ、思い詰めた顔してる…言いたくないなら聞かないけど、言って楽になるなら言っちゃいなよ。」

涼子「あーぁ。マスターにはぜーんぶ、お見通し、ですか?」

マスター「別にそんな事ないよ?ただ涼子ちゃんが分かりやすいだけかな?」

涼子「…そうだなー。マスターだけに話しちゃおっかな?」

マスター「じゃあ、今日はお店閉めて涼子ちゃんの貸切にしちゃおうか!」

涼子「え!?それは悪いからいいよ…」

マスター「生憎と、雨も降ってきたし…今はお客様も涼子ちゃんだけだし。いいよ。」

涼子「そう?じゃあ…甘えちゃおっかな。」

マスター「じゃあ、看板の電気消してくるから待ってて。」






マスター「よし!…お待たせ。お酒ないし、もう一杯先に作ろっか。」

涼子「うん」

マスター「じゃあ、僕の奢りで涼子ちゃんに合うお酒作ってあげるね。」

涼子「ホントに!?ヤッター!!」

マスター「ベースのお酒は涼子ちゃん決める?」

涼子「ううん、マスターが全部決めて!」

マスター「かしこまりました……じゃあ、アマレットをベースにした、カクテルにしようかな。」

涼子「アマレットって何?」

マスター「アーモンドのような香りのするブランデーなんだけど、杏の種部分を漬けたお酒なんだ。」

涼子「あー!ゴッドファーザーとかのカクテルに使われてるやつ?」


マスター「正解!流石、涼子ちゃん!でも、今回はアプリコットフィズにしようかな。」

涼子「アプリコットフィズ?」

マスター「そう、僕は涼子ちゃんにピッタリだと思うんだ。」

涼子「ふーん。楽しみ!」

マスター「一緒に食べるなら何がいいかなぁ…ナッツでいい?」

涼子「うん!」

マスター「はい。おまたせ。」

涼子「ありがとう!……うん!これも美味しい!!流石!マスターw」

マスター「こちらこそ、ありがとうございます。」



涼子「……さっきの話なんだけどね。」

マスター「…はい。」

涼子「実は……会社の上司と…不倫してたの。」

マスター「…そうだったんですか。」

涼子「あんまり驚かないのね。」

マスター「それなりに、色んなお客様を見てきましたから。」

涼子「そっか………ふぅ〜。それでね、奥さんにバレたの。それも2回目」

マスター「もしかして…」

涼子「多分正解かな?」

マスター「じゃあ、初めてお店に来てくださった時が……」

涼子「アハハ……大正解!最初はさぁ、嫁と別れて私と結婚したい!って、でも、すぐばバレちゃったから、ほとぼり冷めるまでの間別れようって。」

マスター「それであの日はあんなによってらしたんですね?」


涼子「そうなんだよね。…それでね。去年の年末によりを戻したいって、でも奥さんにまたばれてさ……今回は……嫁を捨てる気はない!君は遊びだ!ですって。ほんとに有り得ない!」

マスター「それは…大変でしたね。」

涼子「私さ、彼のために尽くしたんだよ?でもね、結局遊びだった…はぁ〜…こんな事なら、より戻さなきゃ良かった。」

マスター「涼子ちゃん…」

涼子「むしろ、はじめから好きにならなきゃよかった!!!…それにね!彼、嫁とはもう何年も無いって言ってたのに……奥さん、妊娠6ヶ月目だって。有り得ないでしょ!」

マスター「……」

涼子「私ほんとに見る目ないんだなぁ。マスターみたいな人好きになればよかった。」

マスター「え?」

涼子「マスターはさ、私の話嫌な顔せず聞いてくれるし、こんなに素敵なカクテルも作れる…それに、顔が好みなんだよねー。」

マスター「ハハハ…ありがとうございます」

涼子「でもさぁ…マスターを好きになってもまた不倫とか、浮気になっちゃうしなぁ。」

マスター「…へ?」

涼子「…え?」

マスター「僕は彼女も嫁も、悲しいかな…いませんよ?」

涼子「ウソ…だって…だいぶ前だけど、マスターが女性と仲良く歩いてて…それで……だから……」

マスター「ちょっと待ってください!」

涼子「スマホ取り出して何してんの?人が話してるのに!」

マスター「……あ、あった。」

涼子「何が?」

マスター「涼子ちゃんが見た女性って…この人??」

涼子「写真?……あ!この人!!!」

マスター「あー…やっぱり……この人は、兄嫁です。」

涼子「え?」

マスター「その女性と歩いてるの見たの、昨年の1月とかその辺じゃなかったですか??」

涼子「あー。確かにそれくらいだったかも。」

マスター「やっぱり…」

涼子「え?マスター不倫してんの?兄嫁と」

マスター「してません。」

涼子「だって!2人で仲良く婦人科に入って行ったし…」

マスター「その時…兄嫁さん妊娠してたんです。それで悪阻が酷くて。僕は昼間空いてるんで、病院の送り迎えしたり、買い物付き合ったりしてたんです。」

涼子「え!?ホントに??」

マスター「本当です。」

涼子「なんだ…そうだったんだ…」

マスター「……はやとちりしたんですか?」

涼子「そうみたいだね。」

マスター「っで、不倫関係を精算した上司に言い寄られて元鞘?」

涼子「……うん。」

マスター「はぁ〜………かですか?」

涼子「え?なんて??」

マスター「だから、馬鹿か!って言ってんだよ。」

涼子「ちょ…客に向かって馬鹿とか酷くない?」

マスター「だって、バカじゃん。ちゃんと確認してくれたら、こんなすれ違い起きないのにさ…」

涼子「ごめんなさい」

マスター「っで?」

涼子「…で??」

マスター「だから、今はどうなのよ?」

涼子「え?な…何がですか?」

マスター「だからさ、今も俺を好きなの?」

涼子「…え?いや…その…」

マスター「ハッキリしろよ!」

涼子「なんかマスターおかしいよ?」

マスター「りくだから」

涼子「え?」

マスター「だから、俺の名前…りくって言うんだ。」

涼子「りく…さん?」

マスター「そう。今後はマスターって呼ばないで。」

涼子「は…ぃ。」

マスター「っでさ、涼子はまだ俺を好き?」

涼子「好き…だけど」

マスター「だけど??なに?」

涼子「私不倫してたんだよ?汚いじゃん」

マスター「そんな事ないよ?涼子は涼子じゃん。俺は涼子が好きだよ?」

涼子「……うそ」

マスター「ほんとだよ!」

涼子「だって…マスターは結婚してるか、彼女がいると思ってたし、仮に居なくても、こんな話聞いたあとじゃ…無理だって思ったから…」

マスター「ダイキリのカクテル言葉知ってる?」

涼子「…知らない」

マスター「希望だよ。」

涼子「希望……素敵だね。」

マスター「じゃあ、アプリコットフィズのカクテル言葉は?」

涼子「わかんない」

マスター「振り向いてください…だよ。」

涼子「え?」

マスター「前に出した、スクリュードライバーは、あなたに心を奪われた。」

涼子「……」

マスター「その前は、キャロル…この想いを君に捧げる……あぁぁぁ!!なんか俺すげー気持ち悪いな。好きな女に出したカクテルに意味持たせて、いつか気がついてくれるとか、乙女かよ!」

涼子「……気持ち悪くなんかない!凄く嬉しいよ?ありがとう!」

マスター「…え!?…じゃあ…」

涼子「ゴメンなさい」


マスター「……!?」

涼子「私もマスターが好きです。でも、ごめんなさい。」

マスター「いや、こっちこそごめん」


涼子「マスt……りくさん。今日は帰るね!また来るから。」

マスター「はい。お待ちしております。」

涼子「じゃっ!」






マスター(あの日から1年、涼子ちゃんはお店には顔を出していない。外で1度だけ見かけたが声はかけられなかった…そして、あの日と同じように今日も雨が降っている。さぁ、今日も開店だ!)




涼子「カランコロンカラン」

マスター「え!?」

涼子「りくさん、いつもの!」

マスター「涼子ちゃん!?………いつものじゃ分からないよ。」

涼子「そっか、じゃあ……キール頂戴!」

マスター(キールは店の名前、そして意味する言葉それは…最高のめぐり逢い。)


マスター「……かしこまりました」