奇跡の1枚
汚い財布を整理していると、免許証が無い事に気付いた。
クレジットカードはもちろん、信玄のスタンプカードやマンガ喫茶の会員証、数々のカラオケ店の会員証等、しょーもない物は軒並み揃っているのに大事な免許証だけ見当たらない。
「もしや最近財布のボタンの閉まりが悪かったから、鞄の中にでも落ちたか?」と、鞄を隈なく調べても見当たらない。
だんだん不安になり、「免許証をなくしたみたいだ」と友人にメールしてみると、「有り得ない、絶対ある」と返信が来たので、「そうだよな、有り得ないよな」とまた探し始めたが一向に見つからない。
いよいよやばいと感じ、友人にメールをしている場合ではないと、警察に電話をした。何かの犯罪に使われては大変である。それだけは何があっても避けたい。
私の慌て具合とは裏腹に、警察の対応は冷静で的確であった。察するに、こんな慌てん坊のドジが毎日山ほど居るのであろう。それは毎回親身になっていては身が持たぬ。
結局再交付の為に手稲の運転免許試験場へ行った。毎回思うが、私の住む南区のど田舎からでは、あそこはいつ行っても遠い。
写真を撮ったり書類を書いたり、何だかんだで時間がかかり、更に全ての書類を提出してから交付迄に1時間強かかる。
何もする事がないので、腹も減っていないのにそばを食べる事にした。そばも早々に食べ終わり、完全にする事がなくなったので思いっきりぼーっとしてみた。すると、「またのご来店をお待ちしています」という看板が目に入ってきた。
「ここに来るったらかなり何年か後だけどなあ・・・」と、運転免許試験場のそば屋の商売熱心さに関心したりしていた。
そんなこんなで出来上がってきた免許証を見て驚いた。
自分で言うのも何だが、写真が抜群に良く写っているのだ。まさに奇跡の1枚である。見合い写真には免許証を使いたいくらいだ。
あまりに嬉しかったので、「免許証で奇跡の1枚が撮れた」と、お客様に話すと、「客がコメントに困る様な事を言うな」と言われてしまった。
なるほどごもっともである。