日々の業務の他に、

特にしたいことがなかった。

移動手段も諦めれば、

行きたいところ、観たいもの

食べたいもの、

楽しみたいことがすべて

霞のように蒸散した。

「ここで何やってんるんやろ」

そう思ったときに、もう一度、

また、あの病的思考

漆黒の深淵からこの腐った脳を掴んだ。

 

 

30代、入院先で降りてきた

馬鹿げた妄想。

「本当のこと」の多面性と

「真か偽か」の二元論ではない逃げ道。

6次元の科学者、「」と『彼女』の物語。

 

ただし、そこに

人間のいう「」は

ないんだと思う

 

 

 

しょぼつく雨の中、男は今朝剃った筈の

顎が気になり無意識に撫でる。そして、

その空白の12年間を噛みしめるように、

戒めの館の重い鉄の門扉を眺めていた。

何もかもの価値が欠落し、想像以上に

外気の清々しさにすら無感覚になっている

己を見つめているもう一人の自分が、

なにか不遜な表情でにやつき、頷いたよう

思えるのが、ふと気に障る。

ぞわっ。右腕が波打ちそうになった。

くう。男はいつも処方されている頓服を

くたびれたボストンバックから取り出すと、

水も飲まずに強引に飲み込み、ひとつ

溜息をついてバス停へと急ぎ足になった。

 

「この世には」老人は5人をぐるりと見渡す。

「人の皮を被った『鬼』と」少し息を止め

「鬼の皮を纏った『人』がおる」と続けた。

皺の奥の小さな目が

赤いTシャツの今風の青年に止まる。

「チョウ、お前は特に若い、

騙されぬように気をつけること」

「承知しました、フウ老師」

固い表情で、チョウと呼ばれた青年は

その言葉を胸に刻んだ。

「師匠、『私たちの感覚』を持ってすれば、

人間の『本性』なんて・・・」

紫の帽子をかぶり碧眼赤髪で大柄、

見るからに西洋の血統を感じさせる

女性が自信ありげに反論する。

「ビ、いやアイリーン

その『慢心』が奴らの狙い目」

老師は静かに天を仰いだ。

「『運命』をも味方につけるその力を

侮るではない」

「そうそうビューティ、

あいつらの後には、あの『アイギスの守り

がついているのよ」

教師のように真面目な印象の水玉スカートの

中年女性が、そっとその肩に手を置く。

「でも、ビやケンにも

『分からないことがある』って怖いよね」

二人の女性の様子を見ながら、

まったく顔を隠した性別不明の白フードが

鈴のような声で笑った。

「あれは『究極の攻撃』、この宇宙にある

『あらゆる存在』を一瞬に『塩』の塊へと

変えるという」

老師は白フードを穏やかに見つめる。

「イよ、お前の『力』も及ぶまい」

「我らは戦わずして守るのみ」

黄色い手袋で白杖を握りしめた初老の男が

大きく頷きながら言う。

「それがこの国で『究極の防御』を守る

五人衆の役目、ですよね」

「うむ」老師フウは答えたが、

次の瞬間「行け!」と獅子のように吼えた。

 

チョウの『完全聴覚』は

TNTのみなぎる固有振動を聞き、

ビの『完全嗅覚』は

大気に広がる異質な金属を嗅ぎとる。

ケンの『完全視覚』は逃げていく箱バンの

ナンバーをわずかな光に捉え、

イの『完全把握』はその構造と起爆時限を

理解した。

最後にショクは頬を地面につけると

完全触覚』で逃走経路を確保して

短く叫ぶ「こっちだ!」。

ズゥゥゥンッ。

工業用爆薬を改造した小さなものだったが、

チョウたちの隠れ家を粉砕するには

充分な『花火』だった。

 

「みんな大丈夫か?」

裸足のショクがとても目に障害があるとは

思えぬスピードで軽やかに駈けて来る。

彼は肌で直接触れたものを完全認識する。

過敏にならぬようにしている黄色い手袋が

彼のトレードマークなのだ。

「師匠は?匂いがしないよ・・」ビは碧の瞳に

大粒の涙を浮かべた。「師匠の匂いが・・」

ケンはもうもうと残る煙の中を凝視し、

すべての光の屈折さえも手がかりに

フウの姿を探す。「見えない・・・『この眼』でも」

チョウはで『聴覚の網』をドーム状に整え、

一帯の人体の奏でる音だけに集中した。

「ん、老師だけじゃなくて」首をひねる。

「イの心音も感じない・・」

我に返ったビがその痕跡を追うが

「途切れてる、なぜ?助かったはずなのに」

「諦めよう、師匠なら前に進めというだろう」

ショクは独り言のように漏らした。「薄情だが」

爆発に巻き込まれてもどこかに何か残るはず。

しかし、『大地』は二人の行方を語らなかった。

「そうかも、まず守らなければ」

ケンはスカートの裾の粉塵を払う。

「これはあいつらの宣戦布告だわ」そして、

強気に見えても、また子供のように泣くビを

優しくハグしながら呟いた。

「ナンバーは3674、絶対『見つける』からね」

 

13年前。

「許してくれ、俺は誰も裏切りたくないんだ」

作業服の元鞍利要は妻たからの前で畳に

額を何度も擦りつけた。

「別れてくれって、あんたのために、

これまでどれだけのことを辛抱したとでも?」

たからは冷ややかだった。元より若い頃整形した

というだけあり、その非合理な美しさには

凶悪な刃さえ含んでいるかのように感じられた。

「あんたが何を企んでいるのか

あたしがなーんにも知らないとでも?」

元鞍を睨んだ、たからの顔が非対称に歪んだ。

 

不確定的に続く

 

『攻防戦伝』~『彼女』と「」のものがたり

 

このお話は頭のあれな人の単なる妄想です。

辻褄が合わなくなったり、

面白くなくても責任は持ちません、あしからず。

 

スタートレック、ヒーローズ、スーパーナチュラル、

フリンジ、デスノート、孔雀王、山田正紀、

諸星大二郎、夢枕獏、小松左京・・・

等々の作品との類似点が

あったとしても

単なる人間レベルでのパクリですので

ご了承ください。