さて、先日参加してきた日本臨床腫瘍学会の患者・家族向けプログラムの続きです。

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2日目の講義の1つ目は、がん患者の心のケア
サイコオンコロジーといい、日本語で言えば精神腫瘍学です。
1970年代にアメリカでがん告知が始まった頃から研究されてきました。
がんになってからの心のQOL、心から行動が、がんに与える影響の科学的研究をされてきました。
2014年に日本では年間90万人が罹患していたのが、2016年には100万人を超えるかもしれません。
今後以前も書きましたが、がん患者の統計が正確になればもっと増えるかもしれませんね。
それだけの方ががん告知を受けるわけです。
がん告知を受けると心の問題が生じます。
◯不安・漠然とした恐れ→状況:ハッキリとしない脅威への直面
◯抑うつ・正常範囲を超えた悲しみの感情→状況:大切な何かを失う、失う事の予測
がん告知を受けた時辿る反応
◯初期の段階(1週間以内)ショック、認めたくない
◯精神的苦痛の時期(1〜2週間)不安、抑うつ
◯適応の時期(数週間)現実に向き合う、受け入れる
アメリカで1983年の資料ですが、外来がん患者の47%にケアが必要である心の状態であったと発表されています。
ケアすべき適応障害と鬱があり、色々統計を取った中で、再発乳がんの3ヶ月後に適応障害になる人35%、鬱7%となっています。
しかしがんが再発しても回復していく、心の回復力も研究されました。
◯適応障害
ストレスに関連して起こる不安・抑うつ状態で、それによる社会的生活に障害を生じる状態
◯うつ病
・抑うつ気分、落ち込み
・興味、喜びの低下
・自責感、自己否定
・焦燥感、制止、イライラ
・希死念慮、死にたい
・不眠
・食欲低下
・集中できない
・疲れやすい、気力がない
これらの項目のうち5個以上あり、それが何週間も続いた状態の場合、鬱の可能性が考えられます。
軽い不安は人間が自分を守る為の感情なので有って正常と考えるのが良いそうです。
では性格とがんは関係はどうなのか?という研究もされました。
1985年のアメリカのデータでは、術後乳がん患者のがんへの取り組み方と生存期間を調べた結果、前向きに取り組む方が長生き出来たと発表されました。
1999年アメリカのデータでは、より研究が進み上記のデータは無効で取り組み方と生存期間は無関係と発表されました。
ただ、術後鬱状態ではなかった人の方が長生きしたと分かりました。
2007年アメリカのデータで他の消化器がんではカウンセリングを受けた方が長生き出来るとありました。
2001年カナダのデータでは、乳がんのグループ療法は長生きの関係は無いが、痛みや辛さの軽減があったとされていました。
性格とがんは関係無いという事です。
ストレスとがんでは
2008年アメリカでメタアナリシスという、ストレスとがんになり易さ、がんになった後の生存期間を調べたところ
なり易さ1.06倍
生命の長さ1.03倍
がん死亡率1.29倍(出版バイアスがあるので、科学的数値はもっと小さいと思われる)
影響はあるがとても小さいと言えます。
ストレス対処は各個人の受けるストレスは千差万別ですので、自分にあったコツをつかむ事が良いです。
ではコツとは
◯正しい知識を身につける
・自分だけでは無い
・言葉に出して話す
・軽度な不安は良い
・ストレスの影響は小さい
◯がん以外で辛かった時の過去の経験を思い出しその時にどんな方法が役立ったか思い出す
◯先輩の経験から学ぶ
◯不安が強いとき
・自分の恐れている事、大切な事を書き出し、優先順位を付ける
◯変えられる事、変えられない事を区別する
変えられない事について、それに対する態度を自分で決める
◯小さな具体的な目標を設定し、行動する
・1日の中でそれに関わる時間を少しずつ増やす
◯再発、転移したとき何をしていたら自分は後悔しないか考え、生活に方向性を持つ
◯気分の落ち込みは、あるがままに受け入れる
生活に支障が出るくらいの状態になると、カウンセリングで話す事により軽減され、薬により改善されるので、相談をする事をためらわないでほしい。
気持ちの辛さや落ち込みが心理的、社会的問題になる何が問題かを気づくのも大事です。
◯問題点を明らかに
◯達成可能な目標
◯様々な解決法を列挙
(実行可能性や常識的な事に囚われない)
◯好ましい解決法を選択
◯実行する
◯結果検討する
これらをする事で、自分の気持ちをコントロールする事が出来るのが分かります。
国立がんセンターホームページの記事の紹介がありました。
アメリカが元です。
◯がん=死と思い込まない、がんは長期間コントロール可能
◯自分のせいでがんになったと思わない
◯気分が落ち込んだ時、過去の解決法を思い出す
◯いつも前向きである必要は無い
◯助けになるものをどんどん利用する
例えば患者会やピアサポートなど
◯心の専門家に相談する事をためらわない
◯リラックス法を見つける
◯医師との信頼関係を築く
◯病気の事を最も親しい人にまで秘密にしない
◯精神的拠り所を見つける
◯治療を止めて、代替療法にやみくもに走らない
最後に患者の家族として
家族は普段通りにそばにいてあげて下さい
頑張れは控えめに。
補足として、がんについて、自分の病気についてよく知るかどうかはその時、その人によります。自分の病気を詳しく知る事で、生活に支障が出るかどうか見極める必要があります。
必死でメモってまとめましたが、分かり辛いところはお許し下さい。
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