こんにちは。

 

「金解禁政策の総整理」(『歴史と地理』第505号、山川出版社、1997年9月)③です。

熱心に読んでくれている皆さん、いつもありがとう。

 

今日は、金本位制について概観した部分を公開します。

いよいよ山場ですね。

 

3 井上準之助はどのような構想を抱いていたか

(1) 金本位制の内容 / (2) 金本位制の機能

 

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3 井上準之助はどのような構想を抱いていたか

 

(1) 金本位制の内容

 

本題にはいる前に、まず、金本位制について概観しておこう。

 

金本位制とは、各国の通貨当局(中央銀行)が自国通貨の価値を一定量の金で表示(この基準を平価または法定平価という)し、平価での金と自国通貨との交換(=兌換)や金の輸出入(国際取引)を自由に認める制度をいう。

このシステムを維持するには、各中央銀行が兌換のための金を蓄積・保有しておかなければならず(正貨準備)、一国の通貨供給量は正貨準備によってコントロールされることになる。

 

日本では、1897(明治30)年の金本位制確立の際、貨幣法が制定され、平価は100円=純金75g(≒49.85ドル)に設定された。

 

(2) 金本位制の機能

 

この金本位制のもつ第1の機能は、為替相場の安定である。

 

たとえば、外国為替市場でドルの需要が高まってドル為替相場が上昇した場合、日本の輸入業者は、通常の支払い手段であるドル為替での決済よりも、日本銀行で円と兌換した金を、運賃・保険料などをかけても輸出(現送)する方が得になる。

このポイントを金現送点という。

 

逆の場合も同様の現象(たとえばドル安・円高になれば生糸輸出代金などは金で日本に現送される)が起こるため、為替相場は、平価を基準として上限も下限も金現送点の範囲内(平価の約1%の範囲内)でしか変動せず、ほぼ安定することになる。

 

第2の機能は、金本位制のもつ自動調節作用である。

 

たとえば、日本がアメリカに対して輸入超過になれば、支払いのためドル為替の需要が増大してドル高・円安となり、まもなく金輸出が開始される。

この金輸出は、日銀での円兌換が前提となり、正貨準備・通貨供給量の減少(デフレーション)に直結する。

やがてデフレ効果が表面化すれば、物価・賃金は下落傾向を強め、輸出増・輸入減が顕著となり、今度は逆に円為替相場が上昇して金輸入がはじまる。

 

このように、金本位制のもとでは、金の輸出入が国際収支のバランスを自動的に調整すると考えられたため、この機能は自動調節作用と呼称された。