融 笏之舞〜髙橋忍師 囃子科協議会能① | この辺りの見所の者

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2024/3/13

東京能楽囃子科協議会定式能三月昼能

国立能楽堂





〈能〉融 笏之舞(金春流)

シテ/髙橋忍(シテ方金春流)

ワキ/館田善博(ワキ方宝生流)

アイ/野村太一郎(和泉流)

笛/一噌幸弘(笛方一噌流)

小鼓/幸 信吾(小鼓方幸流)

大鼓/安福光雄(大鼓方高安流)

太鼓/大川典良(太鼓方金春流)

地頭/本田光洋

地謡/山中一馬、金春憲和、辻井八郎(後列)

政木哲司→後藤和也、本田芳樹、山井綱雄、本田布由樹(前列)

後見/横山紳一、井上貴寛


融 笏之舞を観能して、髙橋忍師の体力と藝の深みのバランスは、今が一番良いのかも知れない。

笏之舞の小書が付くと後場の早舞は盤渉早舞の急ノ舞となり、オロシは一切無い。


中将の面で笏を右手に持ち舞台かは揚幕前までハコビ、太鼓の大川典良師の右手のナガシの強く硬めの音色から早足で舞台に戻るさまは、ドラゴンボールの悟空が筋斗雲に乗ってやってきたような錯覚に襲われた。そこから急ノ舞となる。自分が今まで観能した急ノ舞で、今回が1番早くてグルーヴがあった。自分の脳内では能舞台はクラブで源融がシャープでキレあるダンスを踊っており、そのダンスとグルーヴと囃子の音色を聴いて脳内ヘドバンをひたすらしていたのだ。もし能楽堂でスタンディングが出来たとしたら真っ先に立ち上がっていただろう。


髙橋忍師は還暦になっているはずだけど、融の数日前は確か川崎能楽堂で高砂を舞っていたはす。融の笏之舞を舞って、体力オバケだな。


前場の幕出は少し緊張していて、桶のバランスを微妙に崩れた場面もあった。本田光洋師率いる地謡も初同はいつもよりやや固さがあったけど二ノ同から本来の調子を取り戻す。今の金春流の地謡が変化しているのが改めてわかる。2000年代前半に、宝生流の地謡を聴きまくっていたのだけど、本田光洋師の息と張りの地頭の謡が地謡を統率しており、下掛かりの強さと宝生の息を上手くミックスしたかのような地謡で二ノ同以降は聴きごたえあった。

間狂言の野村太一郎師を観る機会が結構あるが、観るたび良くなっている。重心低く、キリ能の位の密度と、落ち着いた間のある間狂言。

笛の一噌幸弘師のシャープに吹き、大鼓の安福光雄師の掛け声に入る前のキレある息使い。幸 信吾師も久しぶりに聴けた。ワキの館田善博師もワキの風格出ていた。


笏之舞は、融の鬼能の名残があるのではないかと意識して観能していたが、後場の太鼓のナガシから、その意識は何処にぶっ飛んて、ひたすら脳内で踊りまくっていた。源融カッコいいと思いながら。そう思わせた髙橋忍師の藝力。去年観能した定家でも思ったが、藝の全盛期に入ったのだと確信を持つ事が出来た。これからの10年は髙橋忍師が金春流の藝の代表として君臨する事になるだろう。


②に続く↓

③に続く