名古屋宝生会60周年記念別会Part① 宝生和英宗家の〈杜若 沢辺之舞〉を観れて本当に良かった | この辺りの見所の者

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名古屋宝生会が60周年を迎えた記念別会。自由席を11/7日に、辰巳満次郎師の社中会で購入していたので楽しみにしていました。年内一杯で観能を控えるので、宝生和英宗家の能に絶対に触れておきたかった。6・7年前に〈玉鬘〉を水道橋で観て、品はあるけど若さが溢れた演能でした。
一昨年に、金沢能楽会で〈翁〉を観て濃厚な重厚さが身に付いていて驚いた記憶があります。

やっと今の宝生和英宗家の演能が観れる。それも鬘物。

▽素謡〈翁〉
シテ/佐藤 耕司
千歳/和久 荘太郎
地頭/衣斐 正宜

上下裃姿で登場。シテの佐藤師は年輩の方。地謡は抑えてフワフワにはならなかった。シテの味わいのある謡と千歳の締めた謡が場をピリッと引き締めている。

▽能〈杜若 沢辺之舞〉
シテ/宝生和英
ワキ/高安 勝久
笛/藤田 六郎兵衛
小鼓/後藤 嘉津幸(後藤 孝一郎 病気休演)
大鼓/河村 総一郎
太鼓/加藤 洋輝
地頭/朝倉 俊樹

シテが幕中から、のうのーうと呼び掛けの謡。グッと締めて伸ばす謡。ああ、聴けて良かった。節木増かな、紅入唐織着流しで三の松でサシ謡。和英宗家は三十歳になったのかな。身体の密度の濃厚な芳香を放射している。舞台に入っても濃厚な空間。物着で後見座で紫地の長絹に太刀を穿き、初冠に藤の花を挿し、日蔭の糸を垂らします。アシライ物着の囃子も良いなあ。笛の六郎兵衛師は勿論のこと、後藤孝一郎師の代演での小鼓の後藤 嘉津幸師の音色が深い。三重県の能楽公演で良く聴いているんですが、今回の音色の深さは格別。
物着のあとはシテの空間がシュっと締まる。予想以上で嬉しかったのは地謡。朝倉俊樹師地頭で、やや柔っこくなるのではないかと心配しましたが、馬力のある息がある地謡。杜若の濃厚な空間の彩りを描いています。厚みがあるんだよね。やはり地謡前例も若手玄人で固めたのも大きいのかな。クセも息は厚め。東京でも息の厚い地謡を聴きたいものだ。
沢辺之舞の小書が付いて、序之舞の序はじっくりと初段に入りテンポあがり、オロシでシテはニの松へハコビ、舞台を沢辺に見立てて左右に面をゆっくり切り見込みます。何重にも重層に杜若の精や業平や高子の妃が挟まる杜若という曲。沢辺之舞は、杜若の精が主に観えるかな。舞台に戻り、二段目へ。囃子の緩急が激しい。二段目はやや強い舞に観える。
序之舞のあとはイロエ。身体の線がシャープになる。
キリになると、身体の線の変化が垣間見えて、ふくよかか品の業平やシュっとした高子の妃が密度の彩りの変化で舞台空間の色が微妙に変わっていく。

舞終わり、二の松までゆっくりとハコビ、それからやや軽くハコビで幕中へ。


観れて良かった。身体の線と密度の重心が低く、あとは身体の密度の彩りをより洗練させていけば良くなるのでは。濃厚な位取ですが、重たくれていないのはさすが。