「オジサンに500円」①
 

 

河辺を音楽聞きながら楽しく歩いていると、

小さいおじさんに話しかけられた。

 

 

「今、日本を旅してます。

けど最近ろくな飯食べてないです。

400円でいいからカンパしてください」

 

 

おじさんは、

歯に歯垢をしこたま蓄えながら空腹を訴えてきたのだ。

 

 

果たしてこの歯垢は、

過酷な旅で歯を研くことさえ忘れ去ってしまった末のものか、

歯を研くことさえめんどくさいと思えるほどの

たるんだ生活を送り続けた末のものか、

 

私に知る術はない。

 

 

 

一瞬怯んだものの、ふと、

持っていたグレープフルーツジュースが目に入ったので、

「これあげます」と、差し出した。

 

すると小さいおじさんは、少し戸惑いながらも、

「いや、やっぱりいいです」

と、その好意をキッパリと拒んだのだ。

 

 

あっさり引き下がり、

歩き去るおじさん。

 

 

私は、行き場の無いジュースを手に、

呆然と彼の背中を眺めた。

 

 

 

②へつづく

 

 

 

 

 

※エッセイ「究極の自己満足」より抜粋

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このブログは、2017年春に出版予定の

著書公開を中心としたエッセイです。

「旅」「日常」「アート」「子育て」「女」「家族」

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野田夏梨 Noda Karin

エッセイスト / イベンター / パティシエール / ライター

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アートイベント「西条酒蔵芸術祭2017」

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2017年春出版予定エッセイ「究極の自己満足」

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