ナミヤ雑貨店の奇蹟 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

東野圭吾さんの作品を、これまで読む機会がなかった。

児玉清さんが大絶賛していたのに、なぜか手にとらなかった。

このたび東野さんの訃報に接し、読んでみようと思った。

膨大な作品群の中から、直感で『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を選んだ。結果、面白くて面白くて、次のページをめくるのがもどかしいほどだった。

 

世界累計800万部を突破し、「東野圭吾史上、最も泣ける感動作」と高い支持を受ける『「ナミヤ雑貨店の奇蹟』。
一夜を明かすため、悪事を働いた敦也が幼馴染みと一緒に忍び込んだ古い家。そこはかつて店主・浪矢雄治が悩み相談を請け負っていたナミヤ雑貨店だった。廃業したはずの店内に、突然32年前からの悩み相談の手紙が舞い込んでくる。時を越え、手紙のやり取りをはじめる敦也たちは、次第に相談者たちから届く手紙と自分たちとの不思議な共通点に気付き始める。

 

第一章 回答は牛乳箱に

コソ泥をして逃亡中の敦也、翔太、幸平は、盗んだ車が突然動かなくなり、以前翔太が見つけた廃屋「ナミヤ雑貨店」に仕方なく逃げ込み、夜明けを待つことにした。

三人が店を物色していると、突然シャッターの郵便口に手紙が投げ込まれた。手紙を開けると、そこには月のウサギと名乗る者からの悩み相談が書かれていた。

店に残っていた雑誌によると、ナミヤ雑貨店はかつて、店主が投函された相談に一生懸命答えてくれることで有名だったことがわかる。敦也は放っておこうと言うが、翔太と幸平は「こんな機会でないと人の相談に乗れない」と返事を書くことを決意する。

第二章 夜更けにハーモニカを

ミュージシャンを目指す克郎は、慰問演奏のため児童養護施設「丸光園」を訪れた。

演奏を楽しく聞く子どもたちの中に、一人だけ克郎を見ようとしない女の子がいた。克郎はその子を喜ばせようと様々な曲を演奏したが、全く効果はなかった。音楽に興味がないのだと諦め、演奏会の終わりに必ず演奏する自分のオリジナル曲「再生」を演奏すると、突然女の子は興味を示し、克郎に話しかけてきた。

二人だけの小さな時間が流れ、克郎は音楽の力で人の心を動かせることを実感した。

のちに少女は、「再生」を歌い、人気ミュージシャンになる。

第三章 シビックで朝まで

貴之は、父親の雄治が運営するナミヤ雑貨店を訪れ、店を畳んで二世帯同居しようと持ちかけた。しかし雄治は、悩み相談に答えることを生きがいにしており、いつもその話に耳を傾けようとしなかった。だが突然、雄治が潮時だと言い、店を畳んで貴之と同居すると言い出した…。

第四章 黙祷はビートルズで

浩介は、事故で急死した従兄の遺品であるビートルズのレコードを譲り受け、それをきっかけにビートルズのファンになった。

裕福な家庭だったため、部屋には最新型のアンプやスピーカーが置かれ、友人たちにビートルズを聞かせたりしていた。そんなある日、友人からビートルズの解散の話を聞かされた。

浩介は、父親の事業失敗で家族で夜逃げすることになるが、思いもかけない顛末が待っていた。

第五章 空の上から祈りを

夜明けまであと一時間となった時、新たに手紙が投函された。

迷える子犬と名乗る19歳の女性から、OLを辞めて水商売に専念したいが、どうすれば良いかという相談だった。

敦也、翔太、幸平の三人は、軽い気持ちの女性だと決めつけて返信するが、その後の返信で迷える子犬が詳しい事情を告げると、三人の考えは一変する…。そうして第1章の始まりとリンクするエンディングが待っている。

 

こうしてあらすじを書いていても、もどかしくなる。

丸光園という児童養護施設を縦軸に、まるでトリックのような伏線が用意され、登場人物たちの複雑な絡み合いを、見事な筆致で伏線回収する。読者に息つく暇さえ与えない。

読み終えて、作品の中に没頭している自分がいた。登場人物たちが身近かにいた。彼らと一緒に次から次に起こる出来事に固唾を飲んでいた。

ボクも、ナミヤ文具店に「相談事」の手紙を出したくなった。

どんな返事が返ってくるのか、牛乳箱をのぞき込みたくなった。