♪ボンボン盆の十六日に、地獄の蓋が開く~♪
舞台は、提灯を手に持った子どもたちの盆唄から始まる。
こまつ座の『頭痛 肩こり 樋口一葉』を観劇してきた。
22歳の若さで、自分自身に「法通妙心信女」という戒名をつけていた樋口一葉。
42年前、こまつ座旗揚げ公演で、井上ひさしさんが、この「戒名事件」を劇の原動力として書き上げた作品だ。
最初に書いた原稿を没にして苦吟する中、一葉の死生観に寄り添う幽霊・花螢を思いつき、一気に筆が進んだらしい。
明治23(1890)年、樋口夏子19歳の時の盂蘭盆から、
明治31(1898)年、夏子の母多喜の新盆までを描く。
樋口夏子(一葉)と幽霊・花螢のユーモラスな交流、たくましく生きる明治の女性たちの姿が描かれる。
明治の半ば、樋口の家は貧しかった。
父や兄に先立たれ、仕方なく樋口家の戸主となった樋口家の長女・夏子(貫地谷しほり)は、母・多喜(増子倭文江)の期待や妹・邦子(瀬戸さおり)の優しさに応えようと、孤立奮闘する日々を送る。
夏子が「ただ筆を走らせるためだけに、身体をこの世におく」と心に決めた時、夏子の前に現れたのは、彷徨える幽霊の花螢(若村麻由美)だった。花螢は、一葉の分身のような存在だ。
若村麻由美さんの「花螢」は、13年前にも見ている。
当時、ご本人は、必死で余裕なしと謙遜していたが、このたびは、心底から楽しんで演じていることが伝わってくる。
幽霊だった実績があるのではと思うほどだ。
今回で4度目の花螢を演じる若村さんは、今回を集大成にして「成仏」する覚悟で臨んでいるらしいが、まだまだ成仏しないでほしい。
底なしの憤りや深い哀しみを演じるシリアスな役柄が多い若村さんには、喜劇の代表作として大切にしてほしい。
『頭痛 肩こり 樋口一葉』は、8月30日(日)まで、紀伊國屋サザンシアターで上演され、そのあと地方公演に出る。



