かんてんパパと親しまれ、多くの経営者から慕われた塚越寛さんが亡くなった。八十八年の年輪を刻まれたご生涯だった。
伊那食品工業は、日本唯一の寒天製造メーカー。
塚越寛さんは、従業員数人の小さな会社を、従業員600人の会社に育て上げた。
1937年10月、長野県駒ケ根市の生まれ。
伊那食品の経営哲学の「年輪経営」は経済界に多大な影響を与え、国内外を問わず「師」と仰ぐ経営者が少なくない。
社員の幸せを第一に考えた。社員が幸せであれば、モチベーションが上がり業績も向上していく。そして社会に役立つ企業へと成熟していく。その信念を貫いてきた。
長い間、お会いしたいと念願していて、一昨年11月に初めてご交誼を得、去年4月、大人の寺子屋スペシャルの収録をお願いし、再会が叶った。
その時の対談の冒頭は、数字の「八」にまつわる話で盛り上がった。八は、「末広がり」に通じる。
塚越さんが提唱し、経営の根幹に据えた「年輪経営」とは、天候不順でも樹木に年輪ができない年はなく、一年に一本年輪を刻み、前年より確実に少しずつでも成長していくことになぞられている。その積み重ねが、結果として末広がりになる。
だから、算用数字の「8」でなく、漢数字の「八」がお好きだ。
「紆余曲折あったご自身の人生も末広がりですか?」と問うたら、いささか、はにかみながら、首を縦にふられた。
「ことしは88歳。ダブル末広がりですね」と畳みかけたら、これまた、はにかみながら、首を縦にふられた。
そして、その1年後、八十八歳で逝かれた。
塚越寛さんの訃報を一面で伝える信濃毎日新聞
塚越寛さんと初対面の2024年11月11日
大人の寺子屋スペシャル収録時
2025年4月7日
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