NHK夜ドラ『ラジオスター』。
奥能登のとある町を舞台に、予算もスタジオもない中で小さな臨時災害放送局(災害FM)が生まれた。
大切なことはたった1つ。笑いを届けること。
地震と豪雨で傷ついた町を明るくしたいという想いでスタートした放送局だ。
主人公・柊カナデ(福地桃子)は、恋人の故郷・能登へ旅行中に地震に遭う。そのとき、避難所で松本功介(甲本雅裕)が温かく世話をしてくれた。
恩に報いたいと、再び能登を訪れたカナデ。
そこで松本から頼まれたのは、災害FMのラジオパーソナリティーだった。松本の思いに巻き込まれ、主婦の小野さくら(常盤貴子)、消防士の西川誠(渋川清彦)たちが参加。
松本が、ラジオ局をなぜ作りたいのか熱弁を奮う。
「僕はどうしてもラジオをやりたい。地震が起きて僕たちの日常が変わりました。家を失い仕事を失い、絆を引きちぎられました。場を作って声を届けたら、また昔みたいに集まれる。情報伝達だけならこいつ(スマホ)で十分です。でもインターネットは、町の人のネットワークにはかなわん。これ(スマホ)に頼っていたら気づかんうちに、バラバラになって孤立してしまう。いつでも聴けるネットのラジオじゃなくて、おんなじ声をおんなじ時間に、みんなに聴いてほしい。朝、ふと、耳にする声が知っとる誰かやったら、それだけでちょっと元気になったりすると思うんです」
この言葉にラジオ局の存在意義は尽きる。ポッドキャストやボイシー、スタンドFMには、真似の出来ないことがある。
かつて東日本大震災後、郡山市に出来た災害FM「おだがいさまFM」のパーソナリティ吉田恵子さんに聞いた話がある。
避難所暮らしをしていたあるお年寄りが、毎日死ぬことばかり考えていた。そんなとき、なにげなくつけたラジオから、懐かしい故郷富岡の方言が聞こえてきた。浜通りも富岡、浪江、双葉、楢葉、広野で微妙に方言が違うらしい。だから富岡の方言を聴き分け、嬉しかっつたのだ。「このラジオを明日も聴きたい」と思い、毎日聴くようになり、すっかり死ぬことを思わなくなったというのだ。
吉田さんは、震災前までは、富岡町社会福祉協議会の職員で、放送とは無縁だった。震災後の放送局で、すっかりラジオスターになった。誰もがラジオスターになれるのが、災害FMラジオのいいところだ。


