ミュージカル「チョコレートアンダーグラウンド」を観てきた。
エンターテインメントだが、問題提起作でもある。
米騒動ならぬチョコ騒動。
もしも世界でチョコレートが禁止されたら?
国民が選挙に無関心だったために、選ばれた政党・その名も「健全健康党」が極端な政策をとり、チョコレートを取り締まりはじめる。大好きなチョコレートを取り戻したい! 立ち上がったのは少年たちだった。
アレックス・シアラーのベストセラー小説「チョコレート・アンダーグラウンド」が世界初のオリジナルミュージカルになった。
児童文学のフリをしながら鋭い社会風刺をしている作品だ。
選挙に行かなかったらどんなことが起こるのか。
自分ひとりが選挙に行かなくても何も変わらないと大人たちが高をくくっていたら、思いがけない政党によってあっという間に社会が変わってしまう。そういうことが実際に起こり得るということが鮮やかに描かれている。
政治問題を扱っているが、決して押しつけがましくはない。
少年たちが取り戻したいものはチョコレート。
主人公の子どもたちが、チョコレートを取り戻す戦いを通して成長していく。そこに大人たちが手を貸すところも見どころだ。
子どもが立ち上がると、彼らの純粋な行いに大人も影響を受けて立ち上がる。子どもから大人まで、それぞれの世代が持っている人間力を生かし合う物語になっている。
チョコレート禁止条例に反旗を翻す少年2人に、主演の少年忍者・北川拓実さん。ミュージカル「ワイルド・グレイ」での評価も高かった東島京さん。2人を危険視している健全健康党の少年団のリーダーをミュージカル「HERO」が好演だった木村来士さんがつとめる。3人とも二十歳前後の期待の若手たちだ。そこに深く関わるバビおばさんは、土居裕子さん。まるで少年のように
キレッキレッの演技を見せている。
改めてあらすじ。
国民が無関心な隙に、健康推進を掲げる‘健全健康党’が政権を取ってしまい、「チョコレート禁止法」を発令する。
すべての甘味が禁止され、こっそり食べれば逮捕され、個性のない人間に作り変えられる矯正施設へ送られる…。チョコレートの宣伝をしていたモファット(平野綾)をはじめ、国民すべてが途方に暮れる。
そこで立ち上がったのは、チョコレートが大好きなスマッジャー(北川拓実)とハントリー(東島京)。二人は、古本屋のブレイズ(岡田浩暉)、お菓子屋のバビおばさん(土居裕子)の協力を得て、チョコレートの密造に乗り出した。
しかし、同級生で‘健全健康党’の青年部リーダーのフランキー(木村来士) に密造が暴かれ、スマッジャーとバビおばさんは逮捕されてしまう。
ハントリーは不安に駆られながら、ブレイズと共に救出作戦を練る。一方、スマッジャーは厳しい拷問の中、本当に守るべきものは何かに気づき始めていた。
やがてスマッジャーとハントリーは再会を果たし、ブレイズたちと共に、真の革命へと動き出す…。
公演のパンフレットに政治学者の岡田憲治さんが文章を寄せている。投票に行かないには、「なんでもいい」を認めることになると警告を発している。
投票に行っても何も変わらないというシラケた思いは、権力者を応援し、利用されるだけになってしまう。
政策が間違っていると思ったら、良い方向に変えたいなら、仲間を増やすことだ。穏やかに仲間を作り、おかしいと思えることに「生活の延長」で行動すればいいと提言している。
まさに「積小為大」。小さなことの積み重ねが、しだいに大きなうねりとなって、世の中を変えていく。
日本はこのままでいいのか。日本の進むべき道をきちんと示している政党はあるのか。
一方的価値観を押し付ける健全健康党みたいな政党が出現し、実権を握ったら大変なことになる。
参議院選挙も近い。まずは、投票行動を起こさないと。
「チョコレートアンダーグラウンド」は、
明日15日まで、よみうり大手町ホール。
21日、大阪、28日29日富山で公演がある。