おあきと春団治 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

新橋演舞場。

100年近い歴史ある劇場に身を置くだけで華やいだ気になる。

いままでと違う空気があるものの、芝居が始まれば、演者と観客が一体となり、ひととき非日常を楽しむことが出来る。

 

時は明治中期。

おあきと藤吉の姉弟は、大阪で父と3人で暮らしていた。
父・友七 (西川きよし)は、腕は良いが売れない職人。

藤吉も奉公先をクビになるなど手のかかる弟で、よく問題を起こし、

姉のおあきはいつも振り回されきた。

藤吉は、売れっ子落語家の桂文枝(田村亮)に憧れ、落語家を目指す。そして、おあき(藤山直美)は、藤吉を“日本一の落語家”にする為に生きていくことを決意し、二人は支え合っていくことになる。
「どんなことがあっても、この手を離したらあかん…」
そんな二人を亡くなった友七もあの世から見守る。
桂春団治(西川忠志)を名乗り、落語家として歩み始めてからも、生来の無茶な性格から度々もめ事を起こす。

おあきは、春団治の無茶な振る舞いすら、売り込みの道具にする。

その手腕で春団治は売れっ子落語家の道を歩み始める。
おあきは、何があろうと、ひたすら春団治の為に生きる。

 

藤山直美の父である喜劇王・藤山寛美は、春団治を何度も演じた。

芸に対する葛藤を抱き、女性の母性本能をくすぐるところは、春団治に通じるものがあった。その後も、多くの役者が春団治を演じてきたが、いずれも、舞台人としての色気、万人に好かれる愛嬌、新たな芸の境地を開く心意気を感じさせた。そして、今回、春団治を演じた西川忠志さんにも、それを感じた。この役をやるに当たっては、相当なプレッシャーもあったことだろう。

そして、父のきよしさんと同じ舞台に立つことになった。

藤山直美さんからは、「私は31歳で父と別れたので、その後、共演は叶わなかった。忠志さんは、いまも現役のお父さんと同じ板に立てることを大事にしてほしい」と伝えられた。

父のきよしさん曰く「忠志は、愚直なまでに真面目」。いや、それは親譲りかもしれない。

愚直に真面目に役作りを追求した結果、ちょっとしたしぐさ、セリフ回し、相手役との絶妙な間合いなどに、これまでの春団治役とは一線を画す「色気、愛嬌、心意気」が滲み出ていたように思う。

 

26日まで、新橋演舞場で公演は続く。