会いたくて会いたくて | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき
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村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

コロナ禍は、一番会いたい人に、相手を思えば思うほど会えない、会うのを躊躇するという、これまでにない状況を生み出した。

そうした中で、絵本『会いたくて会いたくて』は誕生した。

俳優の室井滋さんと、絵本作家の長谷川義史さんの仲良しコンビがタッグを組んだ最新作。

長谷川義史さんといえば、ダイナミックでユーモラスな絵が特徴的だが、この絵本は、これまでとはタッチが違う。

ガラスペンで描かれた絵は繊細であたたかく、少年とおばあちゃんの心の中が伝わってくる。絵日記部分はクレヨンで子どもの絵そのままに描かれている。


ケイちゃんは、おばあちゃんが大好き。

ママからは「ホームへしばらく行っちゃダメ!」と言われるが、こっそり会いに行く。

施設に入れず、おばあちゃんがいる部屋の窓を見上げるケイちゃんと、窓の向こうから手をふるおばあちゃん。
ふたりのやりとりが、ケイちゃんの日記の形で綴られていく。
「○月×日 日よう日 晴れ
ボク、赤いカーネーションを一本買った。
お花やさんのおばさんはピンク色を一本おまけしてくれたよ。
ひまわりホームにいるボクのおばあちゃん、よろこぶかなあ?」


「会いたい」。ケイちゃんの思いは、ひたすらまっすぐで痛いほど。
どうして会えないの? おばあちゃんに喜んでほしい。頭をなでてほしい。ほんとはだっこしてほしい。
そんなケイちゃんに、おばあちゃんは糸電話をつかって「昔の人のこと」を話してくれる。
昔は、大好きな人に会うのも命がけだったこと。
「1年に1回、一生に一度……。やっと会えても、もう二度とってことが 当たり前だったんだ」

コロナ禍、会いたい人に会えていたことがどんなに貴重だったか、今は世界中の人が実感している。
「会えない分、思いは強くなるよ」
「時間を止めて、じっくり世界を見つめてごらん」
おばあちゃんがケイちゃんに伝えるメッセージに、ハッとする。
どんなに納得しようとしても、さびしい、やり場のない気持ちは変わらない。だが、この絵本の中で、おばあちゃんが丁寧に丁寧に語りかける言葉は、誰かを想う気持ちを、大切に包みこんでくれる。