養老先生と「まる」 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき
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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

先日、たまたま、養老孟司センセイと、猫の「まる」のドキュメンタリー(別称ネコメンタリー)を見た。

NHKが継続的定点的に撮影し、これまでにも何回か放送してきた。

養老家の飼い猫「まる」は18歳。人間でいえば、90歳を超える長寿。

養老センセイも83歳。お年寄り同士のほのぼのとした日常を見ているだけで和む。

 

養老センセイは、鎌倉暮らしが長い。神社仏閣のお散歩は習慣。

特に「お墓」に興味をお持ちだ。お墓の本も書いている。

墓は、その人がいたという記録。

生きている人が、亡くなった人を思い出すよすが。

墓を見ながら、養老センセイは呟く。

「死ぬことは特別なことではない。毎日死んでいるようなもんだ。

意識がなくなり寝ているが、目が覚めなきゃそれだけののこと」。

 

コロナ禍についても、バッサリ。

「不安があって当たり前。不安とどのようにして付き合うか心得ていくことが成熟。不安を消そうとしても消えない。折り合うしかない」

「同じことばかり考えていると、脳は現実感を増す。コロナも考えてばかりいると世界がコロナになってしまう。バランスが悪くなる。修正する唯一の方法は、入ってくるものを変える。自然を見て現実感を調整する。ビルとアスファルトと車だけが世界じゃない」

 

含蓄あることばをさりげなく語る人生の達人も、まるの臨終に際しては動揺の色を隠せない。

番組の最後に、まるの見送りが描かれる。

死について達観していたかに見えた養老センセイも、愛猫の死は、受け止めきれぬ様子。18年も一心同体のようであった相棒がいなくなり、喪失感は半端ではない。

まるの見ていた景色を眺めながら、まるの聞いていた音を聞きながら、

まると同じように日向ぼっこをしながら、思いを巡らす養老センセイの姿がせつない。

養老センセイも、超人でなく、フツーの人なのだ。