全員が主役 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

東京・国立劇場の舞台に、沖縄の中学生高校生が立った。

役者35人、女性アンサンブル39人、男性アンサンブル12人、

演奏10人の総勢96人。

全員が沖縄県うるま市の中学生高校生。全員が主役だと思った。

 

沖縄に300年前から伝わる組踊の現代版

「肝髙の阿麻和利(きむたかのあまわり)」公演が、

東京・国立劇場で行われた。1600の席はぎっしり満員だった。

肝髙とは、心豊か、気高いという意味。

阿麻和利は、15世紀琉球統一の時代の勝連城主。

琉球王朝に敵対した反逆者とされているが、

勝連では、圧政から民衆を救った英雄と崇拝されている。

地域に根差した伝承に光を当て、それを舞台化し演じる中で、

子どもも大人も一体になった感動体験、地域活性化の一助にしようと、

当時の勝連町教育長の上江洲安吉さんが企画した。

子どもたちの可能性に、地域の未来を託した。

正に「肝髙」を地で行く上江洲さんの熱意が、

当初及び腰の周囲を動かした。

以来、県外や海外公演も実現させ、20周年の東京公演は、

上江洲さんの悲願でもあったが、去年92歳で旅立たれた。

なんと、ボクの隣席に上江洲安吉さんの息子さんが座っていた。

感慨深げに舞台を見守る姿に、お父さんの姿を重ねていた。

 

20年間、地域の子どもたちが、バトンを受け継いできた。

1回限りの予定が、再演を願う嘆願書を子どもたちが、教育委員会へ提出したことが、300回を超える奇跡的なロングランに繋がる。

試験勉強や部活をしながら、週2回の稽古をするという光景は、

20年間変わらない。彼らの「一生懸命」が観客の心をとらえる。

ウチナーグチのせりふがわからなくても、琉球舞踊やエイサーなど沖縄の多彩な芸能を取り入れたアンサンブルが観客の心をとらえる。

ゆえに全員が主役なのだ。

舞台を終えて、阿麻和利役の川根達巳さんが挨拶をする。

「上江洲安吉さんのおかげで」と何度も口にした。

隣席の息子さんは、表情を変えなかったが、内心嬉しかったに違いない。「多くのみなさんのおかげで…」「おとうさんおかあさんのおかげで…」と感謝のことばを述べる姿に、もらい泣きした。

この子どもたちの肝髙が、まさに未来なのだ。

 

(終演後、観客を見送る出演者たち)

↓以下の写真は過去の公演から