アルキメデスの大戦 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

昭和20年4月7日、戦艦大和が海中に沈んだ。

3000人を超える命とともに。

世界最大最強の戦艦大和が沈むことに大きな意味があった。

それが、はかないせつないこの映画の隠しテーマだ。

映画の冒頭、リアルなCG撮影で、大和が沈むシーンが5分あまり描かれる。

 

映画『アルキメデスの大戦』は、数学で戦争を止めようとした

天才数学者の物語。

過少予算のからくりを「計算」で解き明かす。その過程がサスペンスタッチで描かれる。 

迫真に迫る役者たちの演技に引き込まれる。

天才数学者を演じる菅田将暉。黒板に数字をスラスラ板書しながら

持論を展開する場面は息を飲む。

大局を見据えた英明さと、茶目っ気を併せ持った新たな山本五十六を演じた舘ひろし。

天才数学者の傍らで、反発から敬意に代わっていく心理を見事に演じ分けた海軍少尉役の柄本佑。

天才数学者にやりこめられた造船中将を演じた田中泯の存在感はすごい。ほとんど黙っているシーンが多かったが、ラストのせりふに重みがある。狂ったことを言っていても、それが正しいことに聞こえてしまう。

大阪の小さな造船会社の社長役の笑福亭鶴瓶さんも、いい味を出している。

 

帝国海軍という巨大権力。

同調圧力と妨害工作。

「巨大戦艦を建造すれば、力を過信した日本は必ず戦争を始める」

映画の中で描かれていることが、妙に現代にもオーバーラップする。

きょう9日、長崎原爆の日平和祈念式典で、長崎市長も穏やかな口調ながら、真摯にいまの核兵器を取り巻く状況を憂えた。

核兵器を持つことは、力の誇示過信に繋がる。

「核兵器をなくす」、こんな簡単なことが何故出来ないのだろう。

冒頭以外は戦闘シーンのない映画は、

人間の心理が戦争を始めることを教えてくれる。