ボクの声は「エアーズロック」 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。


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松森果林さんと、久しぶりにお会いした。

相変わらずの爽やかな笑顔で現れた。

 

松森さんは、17歳の時に聴力を完全に失った。

ラジオ番組でインタビューしたとき、彼女のリクエスト曲

「ラブストーリーは突然に」をかけた時のことは忘れられない。

小田和正さんの高音は、彼女が最後まで聞こえていた声だ。

だが、かけた瞬間、聞こえない彼女になんということをしたのだと

後悔した。ボクは、咄嗟に音楽に合わせて口ずさんだ。

そうしたら、なんと彼女の声が聞こえてくるではないか…。

ボクの口元を見ながら、覚えていた歌を声に出していたのだ。

 

松森さんは、バリアフリーデザインの提案をしたり、

大学で講義したり、多忙な日々を送っている。

NHK手話講座に出演していたこともある。

一人息子の「空」くんは、20歳の大学生になった。

互いの間隙を縫って、会うことが出来た。

 

松森さんとの会話は、メモ用紙が頼だ。

ところが、今回は、新兵器の音声認識アプリが登場した。

スマホに取り付けたマイクに向かって話すと、画面に文字が現れる。

このアプリくん、仕事熱心で、なんでもかんでも文字化する。

ユーモアたっぷりの誤変換もしてくれる。

口にしていないことばまで文字化してしまう。

なぜか、「パー」が何回も画面に出る。

「ムラカミさん!ヒドイ!」と彼女が笑いながら言う。

「ボク、なにも言ってないよ」と否定したら、

「ムラカミさんの心の声かも」と彼女もユーモアのある人だ。

 

チンプンカンプンな問答もあったが、

真面目に、対話とは何かという話になった。

松森さんは、「相手と自分の価値観を擦り合わせ、交換し合い、

自分の考えがわかり、相手の考えを受け入れること」という。

ボクは、「本気のことばを本気でやりとりし、お互い心の扉を開けて、

ことばの引き出しを増やしていくこと」と答えた。

 

話のついでに、ボクの声はどんな声だと想像するか聞いてみた。

「エアーズロック」と即答。

オーストラリアにある赤茶色した一枚岩だ。

澄み切った青空にどっしりと座る岩。

ボクの声には、安心感があるという。

彼女には、聴こえなくても聴こえている。

 

(ムラカミの声のイメージ)

(ユーモアたっぷりの音声認識アプリくん)