岩瀬昇のエネルギーブログ 127.サウジアラムコは石油精製・石油化学部門のみを売却 | 岩瀬昇のエネルギーブログ

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新年早々、英紙『The Economist』(1月6日)はサウジアラビア第二皇太子Mohammad bin Salman (以下、MBS)のインタビュー記事を掲載した。非常に興味深いものだった。

 特に、これまで30歳とも35歳とも伝えられているMBSは、記者の「貴方を含め、30歳以下の若者がサウジの人口の50%以上を占めている・・・」との質問に対して、自らの年齢問題には触れずに回答している点が、筆者には気になった。これは、30歳であることを肯定しているのだろうか?

 いや、これは瑣末な問題だ。

 このインタビューの重要なポイントは、サウジの第三世代が国の有り様の改革を目指している、ということにある。

 その一つとして、国有石油会社サウジアラムコ(以下、アラムコ)の株式売却構想がMBSの口から発表された。

 関係者は色めき立った。なぜならアラムコの保有埋蔵量は世界全体の約15%、約2650億バレルと伝えられているからだ。石油開発会社の「評価」においては、保有埋蔵量が中核を占める。この埋蔵量はエクソンモービルの10倍以上だ。エクソンモービルの最近の株式評価額は・・・、アラムコは世界で最初の1兆ドル(120兆円)以上の会社になる!

 (ちなみに日本の一般会計予算は約100兆円です、サウジは20兆円以下)

 筆者は、別の観点から興味を持ってこの件を読んだ。

アメリカで上場すると、SEC(証券取引委員会)の規定に基づき、詳しく精査された「保有埋蔵量」を財務データとして公表する義務が生じる。アラムコの2650億バレルがSEC基準に合致しているのかどうか? 

「発表されている保有埋蔵量は、欧米の場合は厳し目に、産油国の場合は甘くなる」との筆者認識の正否が確認できる。・・・(詳しくは拙著『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』参照)

 だが、やはり「国の宝石」である上流部門は売却対象にはなっていないようだ。

 今朝、報じられているロイター電 “Exclusive: Saudi Aramco would sell downstream ops, not upstream-source” Jan/10/2016 3:26pm GMT)によると、検討されているのは、アラムコが直接、間接に、国内外に保有している石油精製、石油化学子会社の株式のようなのだ。

 ロイター電はニュースソースを「公式関係筋」としているが、おそらく欧米コンサルタントであろう。第三世代がコンサルを起用しながら経済改革を検討していることは、MBSのインタビュー記事からも推察可能だからだ。

 売却対象となる子会社として、国内では住友化学とJVを組んでいるPetroRabigh(精製&化学)、東海岸のJubailでシェルとJVを組んでいる石油精製、西海岸のYanbuでエクソンモービルおよびSINOPEC(中国)とJVを組んでいる石油精製、海外では韓国や中国、米国における石油精製会社を挙げている。ロイター電によると、アラムコの持分精製能力は500B/Dになるそうだ(ちなみに日本の総消費量は約400B/D)。

 売却比率に関しては、前述した住化とのJVを例に上げ、25%の可能性を示唆している。2008年に国内向けに株式公開(PO)を行っている事例があるからだ(アラムコと住化が37.5%ずつ保有)。

 方法論の一つとして、持株会社を作りすべてのJVの株を持たせ、その持株会社の一部をPOする、というものがあるそうだ。

 だが、これまでの例に従えば、国内向けにディスカウントで売却される可能性があるとも伝えている。

 このように、サウジの財政赤字解消および経済システム大改革の目玉となると報道されたアラムコ民営化案は、極めて現実的なところに収まりそうだ。それでも数百億ドル(tens billion dollars)にはなる、とロイター電は伝えている。

 意図したのかどうか不明だが、IMFを始めとする欧米諸機関、メディアが危機を煽っていたサウジの財政問題は、保有する石油埋蔵量を考えれば「大問題ではない」とのメッセージを世界に発信することには成功した、と言えるだろう。

 日本の財政赤字も保有する資産を勘定すれば大丈夫、などという素人騙しの議論とは大違いだな。

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