マチネとソワレの間の時間を利用して、ドキュメンタリーや珠玉の小作品を多く上映している東中野のポレポレ東中野で45年前に世間を賑わせ、連日テレビで報道された千石イエスと彼のもとに集まって共同生活を続ける女性たちの真実とその後を追ったドキュメンタリー「方舟にのって イエスの方舟45年目の真実」を観た。

このところ、演劇で宗教2世の話とか、あと宗教=信じることを問うようなものを観たことが、この映画を観たいと思ったきっかけだ。

 

***** 事件の概要 映画サイト より*****

1980年、東京・国分寺市から10人の女性が姿を消したという報道がなされた。女性たちを連れ去ったとされる集団「イエスの方舟」の主宰者・千石剛賢は、美しく若い女性を次々と入信させてハーレムを形成していると報じられ、世間を騒然とさせた。2年2カ月にわたる逃避行の末、千石は不起訴となり事件は一応の収束を迎える。しかし彼女たちの共同生活は、45年経った現在も続いていた。

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今では知られるところであるが、彼らは千石を崇めるカルト宗教団体などではなく、真摯に聖書を学ぶため共同生活を選んだ小さなキリスト教信者たちのコミューンである。— それでも、例えば、もともと家族関係がうまくいっていなかったとしても、彼女たちが何も告げずに失踪したことがこの事件の発端であることは間違いないのだが。

 

カリスマ的な魅力を持つ男性を中心としたコミューンにうらわかき女性たちが集まって共同生活をしていることから、何か怪しい、やもすればハーレム状態の集団なのではないか?という国民大衆の、そしてそんなスキャンダラス(であったら良いな、と)を先走って思い描いたメディアによる妄想による警察まで担ぎ出しての国家騒動だった、という内容。

事件当時、持病の心臓病の悪化により救急搬送され、担架に横たわる千石氏に「あなたは悪いとは思っていないんですか?」とマイクを突きつける記者に人間の姿を見たように感じた。

 

当時の報道、記録映像などが興味深い一方で、千石が他界した後もその妻まさこを代表に据え彼女たちが福岡で共同生活を続けている、というのが驚きであり、この事象の核であるのだと思う。

 

「信じるものは救われる」と言う文言をどのようにとるか、、まさに人それぞれだと思うが、それが発する力が宗教というものなのかもしれない。

 

実の家族から離れ、千石の養女となり新しい家族を築いた者もいれば、彼女たちが経営する「シオンの娘」という酒を提供しないクラブに通い満ち足りた気分を味わう人たちもいる。

信じるものがあるという充足感、一緒にいてくれる、話を聞いてくれる人が周りにいる。。。そんなことを幸福の指数とできる、そんなところに人間が深く信じるものがあるのかもしれない。

 

当時の報道映像で、80年代のイエスの方舟の彼女らが強い信条で自らを確立していてしっかりとメディアに応答している姿は美しい。