新国立劇場で鵜山仁演出のシェイクスピアシリーズの新たな展開として「尺には尺を」と「終わりよければすべてよし」の2本建て公演を2日にわたり続けて観た。
これまで新国立劇場では大ヒット作「ヘンリー六世」「リチャード三世」などなどのシェイクスピア歴史劇を鵜山の演出、そしてある程度固定化した俳優陣でシリーズ化して上演してきていて、毎回好評を得て劇場の看板とも言える人気シリーズとなっている。
撮影: 引地信彦
「尺には尺を」
(右から)アンジェロ(岡本健一)、イザベラ(ソニン)
撮影: 引地信彦
「終わりよければすべてよし」
今回は歴史劇ではなく、ベッドトリックが使われた(思っていた相手ではなく別の女性がベッドをともにすることで問題の解決へと導いていくというトリックが話の鍵となっている)問題劇の2作品を同じキャストで日替わりで上演していく、という聞いただけでも気の遠くなるような、俳優にとってはかなりのハードジョブとなる企画となっている。
これまでもことごとくシェイクスピアを見事に料理してきた鵜山だけあって、今の時代には難敵と思われる —死ぬか生きるかというほどに処女性を重要視していた時代の話なので — このダークな喜劇でしっかりと笑い(得に「終わりよければ。。。」で)をとり、あまり日本人に馴染みのない3時間のシェイクスピア劇を見応えのあるものに仕上げていた。
歴史劇シリーズから続く(同じ)舞台前方の池や小橋のセットが劇場のシェイクスピアシリーズという刻印としてシリーズのファンに安心感を与えている。
そして何と言っても歴史劇から続くレギューラー俳優陣—上記の岡本、ソニン、浦井、中嶋をはじめ、立川三貴、那須佐代子など—の安定感が素晴らしい。
戯曲に忠実に上演することで現代の感覚にはあまり通じず少しだれる箇所もあったが、それよりもシェイクスピアをきちんと上演することを重要視した結果であろう。
「終わりよければすべてよし」のフランス王役の岡本健一が、最後の変わり身を含め、光っていた。
演劇界でも外の世界でもなにかとセクハラ・パワハラが問題となっている昨今、この2つの劇で悲劇の中心にいる自立が認められない女たちの笑えない悲劇として、皮肉な問題劇として見るのが一興かも。