駒場から二駅の渋谷へ移動して、オーチャードホールで世界有数のタップダンサー熊谷和徳の一日限りのショー「VOICE」を観た。

 

まあ、本当にとても良いものを観させていただいた、というのが観終わっての感想。

おそらく、自然にわきあがったス2,000人強のタンディングオベーションは、そこに居た人たちが皆同じような気持ちになったからこその結果だと思う。

 

2014年にThe Japan Timesに掲載されたインタビュー。

 
今回はVOICEというショーのタイトルからもわかるように、歌手、それも地方に根付く歌声、アイヌのウポポ(唄)メンバーの女性6人と奄美の島唄代表として元ちとせとのコラボレーション舞台。
 
タップとアイヌ、奄美の民謡???とどんなステージになるのか、期待と一抹の不安を胸に会場へと集まった人々(それにしてもよく入っていたし、熱気があったな〜)が待つ中、暗転の中で響くタップの足音。熊谷が小さなタップ版を床に置いて、客席の中央通路に現れた。その確かな足音で一気に不安は吹っ飛んだ。
 
薄いブルーのスーツに身を包んだ熊谷はそのままステージへと上がり、その彼の姿を後ろからカメラが追う。白いタップぐつに焦点をあわせたその映像は舞台上の巨大スクリーンに映し出され、ステージでの彼の足捌きの詳細にいたるまでを見せてくれる。スマートないでたちの彼のどこからこれほど多彩な音が、2000人の人へと届く力強いタップが踏まれているのか、その一端をその靴の映像で見たような気がした。
 
その後、第一部では民族衣装で登場したアイヌウポポの人たちとのコラボ—アイヌの唄とそして楽器演奏—、そして休憩を挟んでの第二部では元ちとせの歌とのコラボを展開。
 
あくまでもコラボをしている唄声に合わせ、それに重なる歌・音楽としてタップをあわせていく熊谷。そこには対抗ではなく、美しい音のハーモニーが実現していた。
タップダンスというものがダンスだけでなく、音・ミュージックサウンドとしての表現の広がりがあるものだということが確認できたのも嬉しい観劇体験だった。
 
タップ、アイヌ民謡、島唄、、と前衛とは逆の人間の身体表現の根源のところにあるものに心の底から感動した2時間だった。