吉祥寺シアターで、俳優の山崎一が率いる劇壇ガルバの「The Price」の千秋楽公演を観た。

 

「セールスマンの死」「るつぼ」などで知られるアーサー・ミラーのどちらかと言えばマイナーな戯曲「The Price (日本では「代価」という題名になっている)」の上演。

 

****演劇サイトより****

亡き父の遺品を処分するために16年ぶりに再会することになる外科医と警察官の兄弟。弟にはアルコール依存症の妻がいて、そこへ骨董家具の鑑定人が加わる。話が進む中で思いがけず知ることになる父の真実。残されたものの価値、そして、それぞれの人生の決断の価値とは? 

【あらすじ】
舞台はマンハッタン。間もなく取り壊されようとしている煉瓦で作られた家。その屋根裏に古くて大きな家具がギッシリ詰め込まれている。
この家で育ったビクター(堀文明)は、亡き父の家具を処分するために骨董家具売買を営むグレゴリー・ソロモン(山崎一)と会うことになっている。ビクターは、家具を処分するに当たり16年間音信不通の兄ウォルター(大石継太)に連絡を取り続けているが、外科医として成功したウォルター本人とは連絡が取れないまま今日を迎えた。ビクターの妻のエスター(高田聖子)は、夫であるビクターが破産した父親の面倒を見るために科学者になる夢をあきらめ警察官となりそのまま定年直前になってしまったこと、実直に生きてきた自分たち夫婦がいつまでも経済的な余裕を持てないことに不満を持ちアルコールに存症している。
ソロモンによる家具の鑑定が行われ、ビクターがソロモンの言い値を渋々受け入れ売買が成立しようと思われたその時ウォルターが突如現れ、ソロモンの提示した額が少額すぎると疑問を呈す。ビクターは16年間家族に無関心を貫いた兄に意見されることを嫌い口論となり、それは兄弟二人の父と過去を巡る口論へと発展する。そして、ビクターはウォルターの口から思いがけない父の真実を知ることになるのだった。

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金銭感覚であったり、生きていく上での自分の指針・ポリシーであったり、親や家族に対する思い、それらに関しての価値基準が違う兄弟はその違いから全く違った人生を歩むことになった。そんな彼らが人生の決算の時期にあたり、父親が残した果たしてどのくらいの価値があるのか、はたまた無いのか、わからない遺産(古い時代の家具)を前に16年ぶりに再会し、相手の人生を、さらには自分の人生の総決算をするというお話。

家族、近しい人でもそれぞれの考え方、大事にしているもの優先基準にはバラツキがあり、相手に自分と同じ価値を求めることは出来ない。そして彼らは金銭的な価値のほか、人生には数えられない他の意味での価値というものもあるということを見つけていく。 そんな人生の価値について考える中で、「結局、自分以外の人が何を考え、思っているのかはわからないということだけが自明だ」ということを深いところでのテーマとした劇なのだと解釈した。 状況説明の1幕より、父親の存在がクローズアップされ、タネあかしのある2幕の方が断然スリリングだ。

その父親に関しても、つまるところ彼の「本当」はどこにあったのか、、亡くなっている今ではそれを知る由もなく、兄弟はわからないまま、自分なりの解釈を自らに反映させて生きていくしかないのだろう。

 

1点だけ、気になったのがエスタの衣装。シンプルなパンツスーツを着ていたのだが、、1930年代だったらやっぱりロングでタイトなスカートのスーツだろうと思うのだが。。。(パンツはもっとカジュアルな遊び着だったのでは?)