妻とともに、実家訪問。

ただごとでない表情で母が玄関に出てきた。口に手を当てている。喋ると怒り出す。

「盗聴されているの」「家全体が盗聴されているの」母は真剣である。その後、会話は筆談になった。

「電話機を使って盗聴している」「しーっ」「お父さんの所在がわからない」「メソマン、老健でお母さんのことをなにか話した?」

すごい想像力だ。

電話で叔母に老健の愚痴を言ったあたりから、老健に家全体を盗聴されているという。

 

妻の提案で、母の部屋に移動。しかし筆談は続く。どんだけ高性能な電話なんだよ。

 

外で話しましょう→「黒い車が監視している」「6/16は白い車が見張っていた」「4輪バギーが薬屋の帰りに通った」(?)

「印鑑が違っているから、老健が嫌がらせにやっている。」「6/16日中にセールスの電話以外は電話がならなかった」「6/?にYおばさんに老健の批判電話をしてしまった。それから盗聴されている」「おとうさんは老健のことを知らない。すぐに出れると思っている」「とにかく」監視されているからと、暗い部屋での筆談。電気を付けることも駄目らしい。

誰に監視されているの?→「わからない」

携帯の電源を切りましょう→切った。しかし、半分は筆談で続く。

 

もう、タイミングではないが、物忘れ外来へ行く話を切り出した。

もう、我々には限界だ。

M病院へ一緒に行ってほしい。「・・・」(別の話題を出される)

何回かこのパターン

M病院へ一緒に行ってほしい。「なんでM病院なの?」「老人の悩みを聞いてくれるところがある。」「私の頭がおかしくなったって言うの?」「行かない」「私らのために行ってほしい」「頭を下げないで」それでも頭を下げる。「ずっと頭を下げてなさい」

妻からあとフォローをしてもらったが、全く展開はなし。

帰宅することにする。

 

帰り「今3台の黒い車が通過したでしょ?」どこか得意げな表情で母が言った。

 

 

もう、まったく頼れる人も、助けてくれる人もいない。どうすればいいのだろうか。

このまま認知症が進行し、前後不覚になるまでまたなくてはならないのだろうか。

母のためにも、我々介護者のためにも、早く薬を飲んでほしい。(騙されて悪い薬を飲まされると思うのだろうが)

介護度が上がったら、デイサービスに行って、またあの笑顔を取り戻してほしいと願う。

 

もう駄目だ。事態は悪くなる一方だが、まだ本番の介護が始まってもいないのだ。死にたいと思う。

このあと、2日間起きることができなかった。