譲渡債権は難しい分野ではありませんが、私にとっては問題演習がうまくいかない分野の一つにです。
基本的な説明としてYoutube動画を参照にしつつ、演習を解くための条文と判例の知識をインプットしていきましょう。
なお、私が確認した限りでは、行政書士試験の過去問では譲渡債権に関する記述問題は存在しますが、選択式の問題は見つかりませんでした。そのため、宅建試験の過去問を解析することで、より実践的な理解を深めることができると考えています。
今回は、宅建試験の過去問題に挑戦し、そのプロセスを通じて譲渡債権の理解を深める旅路につきます。ご一緒に、この旅に参加してみませんか?
譲渡債権
条文
第466条(債権の譲渡性)
-
債権は、【譲り渡すことができる】。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
- 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを【知り】、又は【重大な過失】によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
※民法では「重大な」過失が付くのは、相殺と債権譲渡にて(珍しい) - 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が【相当の期間】を定めて【譲渡人への履行の催告】をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
第466条の2【譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託】
- 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
- 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
- 第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
第466条の4(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)
- 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
- 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。
第466条の5(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)
- 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
- 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
第466条の6(将来債権の譲渡性)
- 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が【現に発生していること】を要しない。
- 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
- 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第466条第3項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。
第467条(債権の譲渡の対抗要件)
- 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に【通知】をし、又は債務者が【承諾】をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 前項の通知又は承諾は、【確定日付】のある証書によってしなければ、【債務者以外の第三者】に対抗することができない。
第468条(債権の譲渡における債務者の抗弁)
- 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって【譲受人に対抗】することができる。
- 第466条第4項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
第469条(債権の譲渡における相殺権)
- 債務者は、【対抗要件具備時より前】に取得した譲渡人に対する債権による【相殺】をもって譲受人に対抗することができる。
- 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
- 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
- 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
- 第466条第4項の場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条第4項の相当の期間を経過した時」とし、第466条の3の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第466条の3の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。"
重要判例
最判昭和49年3月7日
判示事項
- 指名債権の二重譲渡と優劣の基準
- 民法四六七条二項の確定日付ある通知と認められた事例
裁判要旨
- 指名債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の問の優劣は、確定日付ある通知が債務者に到達した日時又は確定日付ある債務者の承諾の日時の先後によつて決すべきである。
- 債権者が、債権譲渡証書に確定日付を受け、これを即日短時間内に債務者に交付したときは、民法四六七条二項所定の確定日付ある通知があつたものと認めることができる。
最判平成5年3月30日
判示事項
一 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣二 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合と当該債権に係る供託金の還付請求権の帰属
裁判要旨
一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が債権額に相当する金員を供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、差押債権者と債権譲受人は、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得する。
最判昭和55年1月11日
判示事項
指名債権が二重に譲渡され確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達した場合における譲受人の一人からする弁済請求裁判要旨
指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各譲受人は、債務者に対しそれぞれの譲受債権全額の弁済を請求することができ、譲受人の一人から弁済の請求を受けた債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済の責を免れることができない。演習
【宅建過去問】(平成30年問07)
債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 譲渡制限の意思表示がされた債権の譲渡を受けた第三者は、その意思表示の存在を知らなかったことにつき重大な過失があっても、当該債権を取得することができる。
- 債権の譲受人が譲渡制限の意思表示の存在を知っていれば、さらにその債権を譲り受けた転得者がその意思表示の存在を知らなかったことにつき重大な過失がなかったとしても、債務者はその転得者に対して、その債務の履行を拒むことができる。
- 債権譲渡の意思表示の時には発生していない債権であっても、債権譲渡の対象とすることができ、この場合、譲受人は、債権が発生した時点で、当該債権を当然に取得する。
- 譲渡制限の意思表示がされた債権をもって質権の目的とした場合において、質権者がその意思表示の存在について悪意であっても、当該質権設定は有効となる。
【宅建過去問】(令和03年10月問06)債権譲渡
売買代金債権(以下この問において「債権」という。)の譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、当該債権譲渡の効力は妨げられないが、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。
- 債権が譲渡された場合、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、その後に発生した債権を取得できない。
- 譲渡制限の意思表示がされた債権の譲受人が、その意思表示がされていたことを知っていたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができる。
- 債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知し、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができず、その譲渡の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
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【正解】2
【行政書士試験】令和3年(問45)民法 40字記述問題
Aは、Bに対して100万円の売掛代金債権(以下「本件代金債権」といい、解答にあたっても、この語を用いて解答すること。)を有し、本件代金債権については、A・B間において、第三者への譲渡を禁止することが約されていた。しかし、Aは、緊急に資金が必要になったため、本件代金債権をCに譲渡し、Cから譲渡代金90万円を受領するとともに、同譲渡について、Bに通知し、同通知は、Bに到達した。そこで、Cは、Bに対して、本件代金債権の履行期後に本件代金債権の履行を請求した。Bが本件代金債権に係る債務の履行を拒むことができるのは、どのような場合か。民法の規定に照らし、40字程度で記述しなさい。
なお、BのAに対する弁済その他の本件代金債権に係る債務の消滅事由はなく、また、Bの本件代金債権に係る債務の供託はないものとする。
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【解答例】Cが本件代金債権の譲渡制限の意思表示を知り、又は重大な過失により知らなかった。
【参照】民法466条1項2項
誤記にお気づきの方は、DM下さいますようお願い申し上げます。