右手水晶のブレスが軽く痛む。
それは次第に強く巻き付く。
要子が視えるのは、噛みつく蛇。怨恨。
誰かの怨みをかった?
思いあたる節はない。
比留胡神社の神の眷属として模されているウサギの恨みをかったらしい。
そのウサギの像を、禍々しいものとして認識していた。
宮司の車の前に、首のないカラスの死体が落ちていた時からすでに崩壊は始まっていたのかもしれない。
しばらく私は、参拝できなかった。
近づけなかった。
中からまるで蝕まれるように、徐々に闇に襲われている。
それでも自浄作用のごとく、回復する未来でも今は立ち入れない。
それが私の直感だ。
本家の因縁を絶つ為に、先日、松岳神社にも行った。
しかしその時、表立って見えない敵に狙われていた。
手を下さない済むなら何もしない気であったであろう眷属は、手を下さざる得なくなった。
神の眷属としてのプライドを掛けて、私を許せないのだ。
その行為が自ら招く闇落ち破綻としたとしても、諏訪野美琴ごと封印してしまおうとした。
その存在を亡き者とする事で、堕ちる罪すらも発覚しなければそれでよしと考えた様だった。
それ程までに眷属としてのプライドを私は傷つけてしまったようだ。
火をイメージし柏手を打ったが、効果は無かった。
要子には信頼できる神社で祝詞を読む様に言われ、渓蒼神社を参拝した。
正しくは、その駐車場で祝詞を読んだ。
禊払いののち大祓いを読んで柏手を打った。
蛇は燃え、直前に抜け殻だけが残る。
その瞬間から、身に着けている水晶や勾玉、指輪の本来持つ力がより強く感じ、そして胸の真ん中にオレンジの宝珠を感じる。
オレンジの宝珠は太陽の力と、渓蒼神社にいる神の眷属たちの力が込められたものであった。
その宝珠を頂戴した。
そして昨今の立ち寄れない神社事情について要子と話していた。
比留胡神社同様、行きつけの神社に変化を感じていた。
その中には、越宮神社も有る。
天照大神が好んで居る天狗神社も危ない。
特に越宮神社は、繋いではいけない橋ができてから変わってしまった。
越宮神社は建御雷神(タケミカズチ)の神域。
鹿山神社もしかり。
しかし、闇の侵略を感じていた。
だからこそ、闇落ちすることを理解しているが故、自らの剣に神の力を移し、託した。
それ程までに、既に危険が隣り合わせでいる事。
建御雷神を救出する為には、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の力が必要になると言う。
要子の耳には、「我が力を借りるということは、桜の枝を手折る事が重罪と同様。私の力を借りるのは、それ相応の対価が必要と知っての事か?ただの戯れなら、代償を求める。」と聞こえたそうだ。
白蓮公園の桜が咲く頃、オレンジの宝珠を模した手作り団子を 木花開耶姫に献上しに伺うことを決めた。
市内では桜が咲き始めている。
建御雷神と木花開耶姫は、縁が深いようだ。
だからこそ許せないのであろう。
桜の枝をたおるのも人間。
自然破壊の中で進歩してきたのも人間。
しかしその人間を護ってきたのも、多くの神々。
闇を生み、そしてまた闇を封じるのも人間。
遠舞の本格的浄化を前に、それを拒む存在達は動き始めている。
崩壊の未来を実現させたい存在と、光と闇の共存を望む私たちの戦いは始まったばかりだ。
以上、ラノベ風に書くとこんな感じかな。
現代の巫(かんなぎ)系シャーマン。
諏訪野美琴でした。