●デンマークから学ぶ公共のあり方とは ①移民問題と自治区「クリスチャニア」について | 西の なおみ トランジション日記。

西の なおみ トランジション日記。

府中市議会議員 西の なおみ のつれづれ日記。
持続可能な地域社会への移行。
食、経済、エネルギー、職を地元・府中で循環させて地域力を高めよう!

4月に1週間お休みをいただいて、デンマークに行ってきました。
デンマークといえば…。
幸福度ランキング世界2位、福祉・環境の先進国、税金の高い国、投票率80%...。
資源が少なく自然が厳しい貧しい国だったために、公的サービスによる社会保障制度の充実が必要となったことが福祉大国の源流となっているといいます。
1960年代以降、高度成長期には労働者不足を解消するために女性の社会進出を進めることになり、育児や介護を社会福祉として充実させてきたことが、ジェンダーの問題解決にもなっているとか。
資本主義大国で格差だらけの日本とどう違うのか?
垣間見てきたことをレポートします。

移民問題を公園で解決する
 

北欧の中でも特にデンマークは移民を多く受け入れてきた経緯があります。安価な集合住宅があった町に多国籍の住民が集まり、治安の悪くなり何度か暴動も起きました。中でも2007年の暴動は、この地区の開発に対する不満が集まったことから起こりました。コミュニティーを再生させ、スラム化を防ぐために、コペンハーゲン市はノアブロ地区の国鉄の車庫跡地を問題解決のために使うことを決めました。住民主導で公園を作るためのアイディアを話し合い、60カ国以上という多国籍の住民の多様性を重んじて、対話の中から見出したそれぞれの国や地域の遊具、ベンチ、照明などを配置して祖国を思い出したり、他文化に触れることで理解を深められるような工夫をした結果、訪れる人が増えています。

  
日本も公園法の改正で、多様な活用ができるようになってきていますが、経済的効果や賑わいを求めるだけではなく、すべての住民を包括して受け入れられるような公園のあり方を考えていけるといいですね。

 

  

北欧の公共図書館は、移民政策の一つとして情報への平等なアクセスを確保する機関として社会的に認知されている。ノアブロ地区の図書館は各国の言語の本が並び、子どもも使いやすい展示となっています。

首都の中心に「自治区」の存在が!?

 

洗練された北欧の街、コペンハーゲンの中心部唐突に現れる「自治区・クリスチャニア」。1971年、廃墟となった軍隊兵舎にヒッピーやホームレスが侵入して暮らし始めました。80年代になると政府と住民の衝突が本格化し、政府による住居の取り壊しや銃撃戦もあったといいます。クリスチャニア住民や存続を求める市民を巻き込んで抵抗し、90年代にはこれ以上住民を増やさないことや建物を作らないことを条件に政府と合意しました。その後も警官との揉め事がありながら、2011年6月に平和協定が結ばれています。実際に訪れてみると、派手な落書きやアートが各所にあり、一人で歩くのはちょっと怖い感じ。

  

人通りのある道を選んで歩きました。この「自治区」には国家も国旗もあるというし、実際に850人ほどの人が暮らし、クリスチャニアに対して税金も払っています。排除ありきではない、包容力のある街の強さを感じました。

赤い色地に3つ並んだ黄色の丸がクリスチャニアの国旗。

公園にしろ、自治区にしろ、排除ありきではなく共に暮らすためにどうしたらいいのか、という住民主体の議論がすすめられているところが、驚きでした。困った人がいるから条例を作って取り締まろうという発想では、分断が生まれ、共存の可能性も失ってしまう。自治とはそういうことなのだろうと思いました。