爽やかな秋空にどうしてこんなにうつうつとしているんだろう、と思う……
いや嘘だ。どうしてこんなにうつうつとしているのか、だなんて本心では疑問に思っていない。理由はない。
私という存在が憂鬱なのだ。深い眠りにつきたい。眠りにつきたい。過去に戻るか、他人の身体を借りるか。私という存在を捨てて、別の人生を歩むのもいい。とにかく、憂鬱である。
強いていうなら、肌のコンディションが悪いことが理由かもしれないが、うつうつとしているから肌が荒れたかもしれぬ。鶏卵……
人生経験ない、精神年齢、低い、教養、ない、知識、ない、愚鈍で幼いだけならまだしも、一途さややる気もない、うつうつとしたこんな女が、どうこの先、生きようか。
別に、生きる必要もないのだが、苦痛は味わいたくない。苦痛を避けるために生きている。ふわりと蒸発してしまいたい。比喩ではなく、気体になって天へ高く、消える。
覚悟だなんて、そんなの覚悟じゃないんだよ、と、舞台「ぶい」で戦場へ向かうあの人は言っていた。その時がくるのを覚悟するのと、その時がきたとき、そのふたつは全くの別物だと。だから、私が蒸発するときも、今とは全く違う感情で私と、私の人生に憐れみつつ執着するであろう。
楽しいことはある?
……ないかな。
憂鬱から逃げるために心を殺しているので、楽しみや幸せの感度は低い。でも、娯楽で気を紛らわせることはできなくもない。でも一瞬紛れても、気分は転換しない。眠りたい。眠りたい。何もない世界で快適に永遠の眠りにつく。願いはただそれだけ……小さな頃から、どうでもいいことですぐ憂鬱になっていたから、これは生まれ持った気質かな。はあ、難しい、難しい。
古い団地? 中を見たい。
コンクリ打ちっぱなしでレトロ感がある築浅かリフォーム後の建物が好みだったけど個人の一軒家なので紹介できないのが残念。
逃げて逃げて憂鬱から逃げてここまで来たけれど、更に私は逃げ続けなければならない。
「わたし」は私を救わない。そういうことに、興味がない。ただ眠りたいだけ、私は眠るために頑張る、眠ることがご褒美。
私は眠り姫ではないので眠り続けることは許されない。身体は衰え心も衰え、より深く恐ろしい状況に私を誘うだけ。
この醜い顔、醜い身体、吹き出物は湧き出る毒だろうか、毒されているのだろうか。憎い。
腫れないように目はこすらず涙を拭う。理由なき憂鬱は人生であと何度私を苦しめるのか。いつか、全てが破綻しても、私は憂鬱に身を任せ続けるのか、わからない。
私は生きるために重い瞼をこじ開け起き上がる。なるべく柔らかいところを歩いていくしかない……