第2回電王戦~その12 死闘の果てに | タマネギの流氷漬け

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将棋を中心に、長男・次男の少年野球等、子供たちの日々の感じたことに対して書いていきます。

対局は午前10時に一斉に始まり、現在午後6時を回ろうとしている。

ルールは前回と同様お互い3時間の持ち時間で、それが切れると一手60秒以内に着手しないといけない。

副将戦を見てみると、残り時間が永瀬15分、GPS20分で永瀬玉が敵陣の三段目に入り入玉した局面になっていた。

ここでコンピュータ側よりリモートコントロールが復旧したとの連絡がスタジオに入った。遅れ馳せながら副将戦のただのボナンザが強力なPuellaαに、大将戦のただのGPSもモンスターGPSに舞い戻った。

ただ対局者にはその配慮もあってか復旧の連絡はなかったが、永瀬にはそんなことはどうでも良かった。ただ目の前にいる敵を倒すこと、その一念に集中仕切っていた。

思えば、永瀬は三段リーグを三期で抜け渡辺、屋敷、豊島に次ぐ四番目の若さ、17歳0ヶ月でプロになっているが、一期目に13勝5敗という好成績であわよくば中学生プロ棋士誕生というところまで行った逸材でもある。そして千日手名人というあだ名があるぐらい勝利に対する執念が尋常ではなく、また非常に受けも強い。昨年は第2回加古川青流戦、第43期新人王戦と続け様に優勝したことからもその強さは実証済みである。

Puellaαが粘り強さでいけば他のコンピュータプログラムから頭ひとつ抜きん出ているわけだが、今回は相手が悪かった。

永瀬は既に入玉を確定させ、敵陣で第二のと金城作りを始めている。こうなればもう相手が誰であろうとお手上げとなる。一方のPuellaα玉はというと固めるだけ固めた穴熊の姿焼きと化していた。

投げるに投げられないPuellaαは、それから延々と指しついでくるが、永瀬も淡々と嫌がる素振りを見せずPuellaαの穴熊を一枚一枚丹念に剥がしにかかっていた。

気がつけば総手数200手を超える総力戦となっていた。

そしてPuellaαに有効な指し手が無くなった所で、無念の投了となった。

一方大将戦はというと、見ていて心臓に悪いような双方の玉が詰むや詰まざるやという際どい局面になっていた。

そして糸谷、GPSともに一手60秒の秒読みに突入した。

糸谷玉はかつての片美濃城から追われ、左上部へさすらっている。一方のGPS玉も矢倉城を追われ糸谷玉に近づいてきた。

王手に対し合駒でそれを防ぎつつ、逆王手をかけて先手を握る手に汗握る転回になっている。一手指したほうがよく見える、まるで永世竜王の称号をかけたかつての第21期竜王戦:渡辺竜王vs羽生永世六冠第七局のようだ。

しかし、指し手の正確さでは糸谷が僅かに上回っていた。GPSにとってその余りにも巨大化したハードを制御して最善手を探すのには、1分という時間では不十分であったのだ。しっかりと時間を使ってくれる相手ならその考慮時間も使えたのだが、ノータイム指しが代名詞の糸谷が相手というのがGPSにとっては運がなかった。

そして糸谷の入玉が確定し、幾ばくもなくGPSの投了となった。

これで五局全てが終わった。5勝0敗と人間側の完全勝利であった。


これにて仮想電王戦を終えたい。この物語ではプロが貫禄を示す結果で終わっているが、あくまで私個人の感情が強く反映されていることはご了承頂きたい。事実は小説よりも奇なり。第2回将棋電王戦は果たして誰が出場して、どのような展開になり、そしてその勝敗は?と考えると思いは尽きないが、年内には詳細が発表されるであろうとこれもまた楽観的観測。

人間側の対策のカギが渡辺vs羽生の戦いにあると述べたが、まさにこの二人の戦いが将棋会の新たな潮流を作り、それを追随する者が出、将棋会全体の底上げになっていると感じざるを得ない。そう、将棋会全体のレベルアップがコンピュータとの一番の対策になるのではないか・・・コンピュータが名人に勝つ。いつかそんな日が来ることを将棋会の頂点、羽生も認めている。しかし、しかし、最後にこのマンガの主人公のこのセリフで締めくくらせてほしい。

『ハチワンダイバー』(第60話)
ゲームセンターにある将クエというコンピュータ将棋ゲームの四天王を破ったあとの主人公菅田のかっこいいセリフ

「こんなもんに負けたら
将棋を指す意味が 少し ボヤける」

(完)