おまけです。
—『京都の平熱 哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)』鷲田清一著
から
下段の引用文章を参考にしてください
大文字の件は、事実です。私、同時代を生きてました。他のバージョンもありました。大の字にパラパラと懐中電気を照らす。
日活の映画館あります
上七軒歌舞練場あります
「筆おろし 」は多分死語でしょうね
あっちの世界に通じているかはわかりません。
「むかし京大に 、祇園からタクシ ーで講義に出かける哲学の先生がいたり 、雪の舞う大晦日に塀を越えて銀閣寺の庭にしのび込み 、年越しの宴に酔いつぶれて凍死した学生や 、大文字の送り火の前日に集団で山に登って茂みに隠れ 、当日大文字の火がつけられると同時にいっせいに懐中電灯をつけて 「犬 」文字にして市民を怒らせた学生たちがいた 。 「筆おろし 」のお世話になった学生もどっさりいた 、はずだ 。ロ ードショーの映画館は少ないけれど場末の映画館はたっぷりある 。狭苦しい商店街もあれば 、歌舞練場や南座など 、華やかな市民の愉しみの場所もある 。 〈聖 〉と 〈性 〉と 〈学 〉と 〈遊 〉が入れ子になって 、都市の記憶をたっぷり溜めこんでいる路線なのである 。こういう街の並びは 、言うまでもなく 「あっち 」の世界へ通じている 。



